聴診は呼吸器系の異常を非侵襲的に発見する最も有効かつ簡便な手段であり,最近では計測された呼吸音の定量的な周波数特性に基づいた診断が試みられている.しかしながら呼吸音の発生や肺内での音響伝播といった物理的メカニズムについては,まだよくわかっていないことが多い.本報告では,気道内の流れによって発生する空力音とその伝播の物理現象を理解するために我々が取り組んでいる工学的アプローチを紹介し,気道の単純形状モデルと実形状モデルを用いた気流音の計測実験,および気道壁を介した音伝播の数値音響解析で得られた結果を報告する.