日本小児アレルギー学会誌
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シンポジウム5 古くて新しい聴診―基礎から最新の肺音研究―
肺音解析の臨床―乳幼児の気道評価への可能性―
土生川 千珠
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2015 年 29 巻 1 号 p. 65-72

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抄録

肺音は,気道や換気など多くの呼吸状態の情報が含まれている.従来は,正常肺音と異常呼吸音の違いが重要であったが,近年,音響解析の技術進歩により非発作時肺音の微細な構成成分の変化を解析できるようになった.気管支喘息の多くは,乳幼児期に発症し,早期診断と適切な治療介入が重要である.しかし,乳幼児の治療効果や治療中止時期の判断など,長期管理の客観的指標は見当たらない.私達は,乳幼児でも検査が可能なように安静呼吸時の非発作時肺音で気道評価ができる肺音自動解析システムを開発した.センサーを右胸部にテープ固定し,数十秒間記録し,呼吸相を自動判別し解析する.肺音から個体差の影響を除外するために,日本人小児の肺音の正常値(強度)を作成し,吸気音の正常の強度からの残差(強度差)をic700(index chest wall at 700 Hz)を指標とした.ic700は,喘息児と健常児,重症度で,有意な差があり,閉塞性の指標や症状評価とも関連し,治療効果の判定が可能である.乳幼児の客観的気道指標として有用である.

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© 2015 日本小児アレルギー学会
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