日本小児アレルギー学会誌
Online ISSN : 1882-2738
Print ISSN : 0914-2649
ISSN-L : 0914-2649
原著
妊娠中/授乳中の母親の鶏卵摂取が乳児期の感作へ与える影響についての検討
渋谷 紀子斉藤 恵美子
著者情報
ジャーナル 認証あり

2015 年 29 巻 5 号 p. 701-708

詳細
抄録

【背景】抗原未摂取の乳児の多くが鶏卵に感作されているが,その感作経路については明らかでない.【目的】乳児への卵白抗原感作の機序を明らかにすること.【方法】出生コホート研究により131名の乳児に,1歳まで3か月ごとに診察・プリックテストとアンケート調査を行った.また,母親の過去1か月間の鶏卵摂取量について,0, 1, 6か月時に調査した.【結果】131名のうち,生後6か月時に33名(25%)が卵白抗原に感作されていた.感作頻度は,母親の鶏卵摂取量増加に伴い上昇する傾向があったが,妊娠中および生後1か月時に摂取量が多いと逆に頻度は低下した.母親の鶏卵摂取量が同じ場合には,多く母乳を与えられている児の方が感作や食物アレルギー(food allergy:FA)発症頻度が高かった.【結論】母親の鶏卵摂取の時期や量により,感作状況が修飾される可能性があり,耐性が誘導されるとすれば生後早期までに限られることが示唆された.卵白抗原の感作やFAの成立には環境中より母乳中の抗原の影響が大きいと考えられた.

著者関連情報
© 2015 日本小児アレルギー学会
前の記事 次の記事
feedback
Top