2017 年 31 巻 2 号 p. 113-123
【目的】大都市圏外を医療圏とする当科におけるアドレナリン自己注射薬 (AAI) 処方および使用の実態を調査した.
【対象と方法】当科でAAIを処方した124名 (男79名, 女45名), 再処方を含めた322本の処方について後方視的に検討した.
【結果】すべて食物アレルギーに対する処方であり, 体重15kg未満の児が36名 (29%) であった. AAIを処方された児の97%にアナフィラキシー (An) の既往があった. 処方後に全体の27% (34名) がGrade 3以上のAnを55件起こした. 15kg未満児の6件を含む30件でAAIが使用され, いずれも重大な副作用はなかった. AAI処方に影響した因子は, 熊本市外で救急病院まで10km以上の患者であった (p<0.01). 患者背景, Anの発症頻度やAAI使用頻度には距離による差はなかった.
【考察】当院では, 近隣の救急病院の有無がAAI処方に考慮されていたが, AAIの使用実態は救急病院への距離によって違いのないことが示された. 救急病院への距離にかかわらず, AAIが適切に使用されるための指導が必要である.