日本小児アレルギー学会誌
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ガイドライン解説:食物アレルギー診療ガイドライン2016
第2章 免疫学的背景の知識
井上 祐三朗大嶋 勇成
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2017 年 31 巻 2 号 p. 180-187

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抄録

 食物は生体にとって有益な異物であるため, 経口免疫寛容が誘導され過剰な免疫応答が抑制される. このような経口免疫寛容の破綻は, 食物アレルギーの発症メカニズムの一つと考えられている. 食物アレルゲンによる感作には胎内感作, 経腸管感作, 経気道感作, 経皮感作など複数の曝露経路による感作が知られており, 食物アレルギーの発症におけるそれぞれの役割が注目されている.

 IgE依存性アレルギーでは, マスト細胞上の複数のアレルゲン特異的IgEとアレルゲンの結合によりIgEが架橋され, ケミカルメディエーターの脱顆粒と脂質メディエーターなどの産生が誘導される. 非IgE依存性アレルギーの病態は不明な点が多い.

 乳幼児期の即時型食物アレルギー患者の多くは, 成長とともに耐性を獲得する. 自然耐性獲得の機序として, 成長による消化管の消化機能, 物理化学的防御機構, 経口免疫寛容機構の発達などが考えられている.

 食物アレルギーの病態がさらに明らかとなり, 発症予防や寛解誘導を目指したアプローチが, 近い将来に臨床応用されることが期待される.

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