日本小児アレルギー学会誌
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総説
川崎病研究の最前線
井上 隆志村上 将啓松田 明生
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2021 年 35 巻 2 号 p. 145-151

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抄録

川崎病は,川崎富作博士により1967年に報告された乳幼児の血管炎症候群である.臨床的に一番問題なのは冠動脈炎症による心後遺症(冠動脈瘤)である.従って,急性期治療最大の目標はなるべく早期に血管炎を沈静化し,心後遺症合併を予防することである.2000年代になって標準治療として免疫グロブリン療法(intravenous immunoglobulin:IVIG)が確立し,心後遺症合併による突然死の数が激減した.その後の多くの臨床研究,ゲノム研究の成果からさらに治療法は進歩している.特に,ゲノム研究を背景に承認薬となった免疫抑制剤であるシクロスポリンは,基礎研究成果から着想した治療法開発で,今後の研究が目指すべき方向性を示している.一方で,治療法の進歩にも関わらず,いまだ年間300人程度の心後遺症合併患者が発生しており,川崎病は日本を含む先進諸国における小児期発症後天性心疾患の最大の原因となっている.これを克服するためには,病態メカニズムに基づいたより疾患特異性の高い治療薬の開発が求められる.

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© 2021 日本小児アレルギー学会
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