日本小児アレルギー学会誌
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35 巻, 2 号
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原著
  • ~鼻炎症状及び副反応評価表を活用した治療状況の検討~
    石黒 奈緒, 中村 理恵, 根津 櫻子
    2021 年 35 巻 2 号 p. 121-130
    発行日: 2021/06/20
    公開日: 2021/06/20
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    舌下免疫療法(SLIT)の小児における臨床効果の報告は少ない.ダニSLITを開始した通年性アレルギー性鼻炎の小児患者100名を対象に,治療開始から6か月間の治療状況及び今後の課題を検討した.評価には鼻炎症状を中心とした治療効果に関する21項目と副反応17項目から成る独自のVisual Analog Scale(VAS)表を用いた.21項目中14項目のVAS平均値は,観察期間中に有意な減少を認めた.副反応を訴える患者割合は治療開始1か月以内に増加し,口腔内や喉の痒みが多かった.この時期では20%の患者が治療の辛さを訴えた.治療中断者は14名で,その内3名に消化器症状の副反応の訴えがあった.治療中断群のスギ花粉特異的IgE値は治療継続群より有意に高かった.小児におけるSLITの臨床効果は比較的早期から期待できることが示唆された.長期の治療をより効果的に継続していくためには,副反応に対する十分な説明を行い,適切な対処法をアドバイスするなど患者や保護者への積極的な関わりが重要だといえる.

  • 池田 聡子, 毛利 陽介, 川口 千晴, 清益 功浩
    2021 年 35 巻 2 号 p. 131-134
    発行日: 2021/06/20
    公開日: 2021/06/20
    ジャーナル 認証あり

    今回,我々はRSウイルス(respiratory syncytial virus:RSV)反復感染時に重症化する症例から何らかのアレルギー因子がないかどうかを検討した.対象は2015年4月から2020年3月までの5年間に当科を受診し,RSV迅速検査で複数回陽性になった反復感染例31例を初回感染時と比較して重症化した重症群9例と重症化しなかった非重症群22例で比較検討した.アトピー性皮膚炎,喘鳴例では,重症群,非重症群ともに有意差はなかったが,食物アレルギーについては,重症群で有意に多かった.今回の検討では,反復感染時に重症化するアレルギー因子として食物アレルギーが示唆された.

  • 酒井 一徳, 杉浦 至郎, 尾辻 健太
    2021 年 35 巻 2 号 p. 135-144
    発行日: 2021/06/20
    公開日: 2021/06/20
    ジャーナル 認証あり

    【目的】鶏卵アレルギー(EA)の自然歴及びEA遷延のリスク因子を同定する.

    【方法】沖縄協同病院小児科でEAと診断された児を対象に後向きコホートを作成した.鶏卵耐性獲得率の経年的変化を示し,6歳時点における鶏卵除去継続に関連する1歳台の背景因子に関して検討を行った.

    【結果】対象210例の鶏卵耐性獲得率は2歳12%,3歳34%,4歳54%,5歳68%,6歳で79%(134/170)であり,6歳時点で解除群134例,遷延群36例,脱落群40例であった.多重ロジスティック回帰分析では,鶏卵完全除去(オッズ比:13.8,P<0.01),卵白sIgE値(class)高値(オッズ比:3.84,P<0.01)が6歳時のEA遷延と有意に関連していたが,性別及びアナフィラキシーの既往とは有意な関連を認めなかった.

    【結語】約8割の鶏卵アレルギーは6歳までに寛解するが,1歳台の鶏卵完全除去と卵白sIgE高値は6歳以降もEAが遷延するリスク因子である.

総説
  • 井上 隆志, 村上 将啓, 松田 明生
    2021 年 35 巻 2 号 p. 145-151
    発行日: 2021/06/20
    公開日: 2021/06/20
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    川崎病は,川崎富作博士により1967年に報告された乳幼児の血管炎症候群である.臨床的に一番問題なのは冠動脈炎症による心後遺症(冠動脈瘤)である.従って,急性期治療最大の目標はなるべく早期に血管炎を沈静化し,心後遺症合併を予防することである.2000年代になって標準治療として免疫グロブリン療法(intravenous immunoglobulin:IVIG)が確立し,心後遺症合併による突然死の数が激減した.その後の多くの臨床研究,ゲノム研究の成果からさらに治療法は進歩している.特に,ゲノム研究を背景に承認薬となった免疫抑制剤であるシクロスポリンは,基礎研究成果から着想した治療法開発で,今後の研究が目指すべき方向性を示している.一方で,治療法の進歩にも関わらず,いまだ年間300人程度の心後遺症合併患者が発生しており,川崎病は日本を含む先進諸国における小児期発症後天性心疾患の最大の原因となっている.これを克服するためには,病態メカニズムに基づいたより疾患特異性の高い治療薬の開発が求められる.

受動喫煙防止ワーキンググループ報告
  • 池田 政憲, 吉川 知伸, 是松 聖悟, 鈴木 修一, 寺田 明彦, 藤井 洋輔
    2021 年 35 巻 2 号 p. 152-169
    発行日: 2021/06/20
    公開日: 2021/06/20
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    電子付録

    受動喫煙と小児期のアレルギー疾患との関連性を調べる目的で,8項目のClinical Questionについて疫学研究などの医学的知見をシステマティックレビューにより検討した.受動喫煙は,小児喘息における発症リスクの増加と重症化および呼吸機能低下,小児の咳嗽や痰の増加に関連性が認められた.胎児期の母親の喫煙は,小児喘息の発症および出生時からの呼吸機能低下と関連がみられた.また,受動喫煙は総IgEの上昇と特異的IgEやプリックテストの陽性化に関係し,特に乳児期の受動喫煙は食物や室内アレルゲン等への感作に有意に関連していた.アレルギー性鼻炎では発症と増悪に関連するリスク因子であることが示唆された.受動喫煙が小児期のアレルギー疾患に及ぼす影響は大きく,積極的に受動喫煙を防ぐことが推奨される.なお,アトピー性皮膚炎と食物アレルギーにおいては研究論文の数が少なく且つ関連の有無についても結果が拮抗しているため,受動喫煙との因果関係は明らかではないと結論した.

ガイドライン解説:小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2020
  • 二村 昌樹, 足立 雄一
    2021 年 35 巻 2 号 p. 170-174
    発行日: 2021/06/20
    公開日: 2021/06/20
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    小児気管支喘息治療・管理ガイドライン(JPGL)2020は,前回から3年ぶりに改訂された.JPGL2020も前回と同様にMindsに準拠したガイドラインで,12のクリニカルクエッション(CQ)を中心としてエビデンスに基づいた喘息の治療管理に関する記載と,病態や疫学など最新の知見についての記載で構成されている.第1章では,ガイドラインの作成経緯とともにCQの推奨文および解説が記載されている.JPGL2020では新たに5つのCQを加えて,それぞれにシステマティックレビューを行った.コクランレビューを参考にして,医学中央雑誌も加えた医学文献データベースを検索して文献を抽出した.得られた情報はアウトカムごとに統合的に検討し,バイアスとともにエビデンス総体を評価した.CQの推奨文はガイドライン委員の無記名投票によって決定され,ガイドラインにはその投票結果と推奨内容を理解するための解説文も掲載された.

  • 山出 史也, 下条 直樹
    2021 年 35 巻 2 号 p. 175-180
    発行日: 2021/06/20
    公開日: 2021/06/20
    ジャーナル 認証あり

    小児気管支喘息治療・管理ガイドライン(Japanese Pediatric Guideline for The Treatment and Management of Asthma:JPGL)2020 第2章では,小児気管支喘息の定義,病態生理,診断,重症度分類について記載している.今回の改訂では,小児気管支喘息の定義を見直すとともに,2型気道炎症に重点をおいた病態生理の記載,喘息の鑑別に関する図,鑑別で重要な声帯機能不全(Vocal cord dysfunction, VCD)に関するコラム等を追加するとともに,他章と重なる記載内容を第2章から削除しコンパクトにしている.小児気管支喘息の病態生理を理解し,鑑別・診断をすすめることは,小児気管支喘息の診断ならびに治療・管理の重要な一歩である.本稿では,JPGL2020の第2章における,JPGL2017からの変更点について解説する.

  • 吉田 幸一, 飯野 晃
    2021 年 35 巻 2 号 p. 181-185
    発行日: 2021/06/20
    公開日: 2021/06/20
    ジャーナル 認証あり

    小児気管支喘息治療・管理ガイドライン(JPGL)2020において,第3章「疫学」には気管支喘息の有病率や入院率,喘息死とともに合併症,予後など実際の診療に必要な疫学データが記述されている.近年報告された疫学調査結果のなかで特筆すべき事項として,厚生労働省による人口動態調査にて2017年,2018年と2年間,14歳未満の喘息死亡数が0と報告されたことである.この小児喘息における好ましい結果にJPGLが貢献しているものと思われるが,20歳未満の喘息死亡ゼロが実現,そして継続できるように今後もJPGLが小児喘息治療のツールとして広く活用されることを期待している.

  • 永倉 顕一, 海老澤 元宏
    2021 年 35 巻 2 号 p. 186-191
    発行日: 2021/06/20
    公開日: 2021/06/20
    ジャーナル 認証あり

    「小児気管支喘息治療・管理ガイドライン(JPGL)2020」の第4章 危険因子とその対策では気管支喘息の発症に関わる個体因子と環境因子,急性増悪(発作)に関わる環境因子の調査結果を最新の情報に更新した.その他では,環境因子において近年注目されている「マイクロバイオーム」,「抗菌薬」,「母体への薬物投与」に関して新たに項立てした点,喘息の診療に重要である「室内環境整備のポイント」に関して図を用いた説明を加えた点,「海外の喘息ガイドラインにおける喘息の発症予防および増悪予防の指針」を表にまとめて示した点などがJPGL2017からの主な変更点である.しかしながら,本邦での喘息診療において重要な家塵中のダニの除去に関するエビデンスはいまだ乏しい.2020年のコロナウイルス感染症2019(COVID-19)のパンデミックに伴い喘息による救急受診や入院の患者数は減少しており,ウイルス感染症の予防対策やマスク着用によるアレルゲン曝露の減少の関連が示唆されている.

解説:アレルゲン
  • 吉田 幸一
    2021 年 35 巻 2 号 p. 192-197
    発行日: 2021/06/20
    公開日: 2021/06/20
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    医療従事者が感染防御対策を行いはじめた1980~90年代に,ラテックス(天然ゴム)アレルギーの重症例・死亡例が複数報告され社会問題となった.その後の研究により,ラテックスフリーやパウダーフリーの手袋を使用する予防戦略が示され発症リスクは軽減されてきた.しかしラテックスによるアナフィラキシーショックの小児例が今でも日本で報告され,医療現場で発生する即時型アレルギーの原因アレルゲンであることに変わりはない.

    現在15種類のコンポーネントがラテックスアレルゲンとして命名登録され,ラテックスの主要アレルゲンはHev b 1, Hev b 3, Hev b 5, Hev b 6である.Hev b 6.02はIgEの主要な結合部位で,その特異的IgE抗体値は粗抗原に対する特異的IgE抗体値とともに臨床現場で測定できる.またラテックスアレルギー患者はバナナ,アボカド,クリ,キウイに対するアレルギーを発症しやすく,latex-fruit syndromeとして知られている.

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