2022 年 36 巻 2 号 p. 148-151
皮膚裂傷はアドレナリン自己注射薬(AAI)使用に伴い発生しうる有害事象である.今回,医療現場で生じたAAI使用による裂傷事例を経験したため報告する.
症例は2歳男児.卵アレルギーを有し,AAIが処方されていた.食物経口負荷試験で確認した閾値以下でのゆで卵白摂取を開始したが,後日,指示量を摂取後にアナフィラキシー症状を認めた.自宅ではAAIを使用できず,当院救急外来を受診した.アドレナリン投与の必要性について説明を受けた保護者が,医療者の監督下でのAAI使用を希望したため,医師が患児の下肢を固定した状態で,保護者がAAIを使用した.しかし,患児の体動に対応できず,足が動いた結果,大腿部に10cmの裂傷が生じた.使用したAAIの針はカバーに収納され,速やかに大腿から抜去された.また,アナフィラキシー症状は速やかに改善した.一方,裂傷は縫合を要さなかったものの後に瘢痕化した.
医療従事者が実際にAAI使用を経験する機会は少ない.本例は稀な事例ではあるが,医療従事者へのシミュレーション教育などを用いた適切で継続的なAAI教育が重要であると考えられた.