日本小児アレルギー学会誌
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シンポジウム3:アレルギー予防についての話題
環境介入(受動喫煙)によりアレルギーは予防できるのか
池田 政憲
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2023 年 37 巻 1 号 p. 33-43

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抄録

受動喫煙は,小児喘息の発症と重症化のみならず呼吸機能低下のリスクを増加させ,総IgEの上昇と食物および吸入アレルゲンの感作リスクを高める.妊娠中の母親の喫煙は,胎児の肺成長を阻害し出生時からの呼吸機能低下をもたらし,学童期以降の呼吸機能低下と重症喘息のリスクを増加させる.妊娠中の母親の受動喫煙においても,臍帯血の制御性T細胞はエピジェネティックな機序により減少を生じ,乳児期からのアトピー性皮膚炎とアレルゲン感作,喘鳴のリスクが上昇する.受動喫煙は,タバコ煙曝露により疾患リスクが増加するのみではなく,受動喫煙防止を法制化する介入によって疾患リスクが減少することも科学的根拠が確立している.公共の場を全面禁煙にする「タバコの規制に関するWHO枠組条約(FCTC)」に基づく罰則を設けた法制化により人々が守られることが世界標準になっている.FCTCを実現し,胎児期から成人期へ一貫した無煙環境が適切に整備されることによって,受動喫煙によるアレルギー疾患リスクは抑制ないしは予防できると考えられる.

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© 2023 日本小児アレルギー学会
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