日本小児アレルギー学会誌
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解説:免疫アレルギー疾患における分子標的薬
JAK阻害薬
~リウマチ性疾患への使用から学ぶ長所と短所~
井上 祐三朗
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2024 年 38 巻 3 号 p. 289-294

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抄録

ヤヌスキナーゼ阻害薬(JAKi)は,約40種類のサイトカインや成長因子のシグナル伝達に関わるJAKの機能を阻害することにより,疾患の病態修飾をおこなう低分子分子標的薬である.関節リウマチに対するJAKiは,生物学的疾患修飾性抗リウマチ薬に比類する有効性を認め,本邦においてはアトピー性皮膚炎よりも7年早く保険適用が承認されたが,長期安全性を検討する臨床試験や製造販売後調査の結果から,高リスク患者における死亡・心血管イベント・悪性腫瘍・血栓症などの注意喚起がなされている.また,小児リウマチ性疾患に対するJAKiは,既存治療で効果不十分な多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎に対して,2024年3月にバリシチニブ(BARI)の保険適用が承認されたばかりであり,リアルワールドデータはまだ明らかではない.本邦では,時を同じくして,BARIは既存治療で効果不十分な2歳以上の小児アトピー性皮膚炎にも保険適用が承認された.抗体薬にはない長所をもつJAKiを安全に使いこなせるように,小児科医の経験の集積が望まれる.

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© 2024 日本小児アレルギー学会
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