食物アレルギーの耐性獲得の機序には,消化機能や粘膜バリア機能の発達に加えて経口免疫寛容の成立が関与する.食物抗原がアミノ酸にまで分解されると抗原性が消失し免疫応答は惹起されない.粘膜バリアは,粘液や腸上皮細胞,IgA,抗菌ペプチドによって構成され,腸管からの抗原の侵入を阻止する役割を果たしている.経口免疫寛容は,消化管での抗原認識に対する免疫応答を抑制する生理現象であり,抗原提示細胞や制御性T細胞,抑制性サイトカイン等により調節される.腸管以外には肝臓や扁桃腺も免疫寛容を誘導する器官であり,腸内細菌叢も寛容の誘導に寄与する.経口免疫療法の機序には獲得免疫と自然免疫が複雑に関与しており,特に制御性T細胞やIL-10による免疫応答の負への制御が重要である.高容量の抗原はclonal anergyを誘導するが,腸管炎症やアレルギー反応を増強し,寛容の誘導を妨げる可能性がある.経口免疫療法のプロトコールの最適化や新たな治療法の開発のためには,より詳細な機序を解明する必要がある.