2025 年 39 巻 1 号 p. 1-6
症例は7歳男児.幼児期より軽症持続型あるいは中等症持続型の気管支喘息に対して無治療であった.前医に意識障害を伴う呼吸不全のために受診し,集中治療目的に当院に転院した.両親はステロイドに限定して使用を拒否したが,救命のために不可欠と説明し同意を得た.ステロイドの全身投与に加えて,筋弛緩下での人工呼吸管理,プロカテロール反復吸入,硫酸マグネシウム持続注射などが開始された.その後もステロイドの速やかな中止を希望していたが,説明と傾聴を連日行うことで,急性増悪時に限定した使用を容認するようになり,最終的にはステロイドを使用してこなかったことへの後悔の発言もみられ,葛藤しながらも受容していく様が見受けられた.第6病日に抜管し,確実に長期管理に繋ぐためアレルギー外来のある前医に転院した.以降6か月間吸入ステロイドを継続し,急性増悪はみられていない.致死的気管支喘息増悪の経験はステロイド受容の契機となりうるが,受容のための時間を設けないままにステロイド治療を開始するため,両親の心情への配慮がより重要である.