アトピー性皮膚炎 (atopic dermatitis, AD) における亜鉛 (Zinc, Zn) の関与について検討した. AD患者群並びに気管支喘息 (bronchial asthma, BA) を合併するAD患者群の血中Zn濃度を, ADの重症度でグループ分けして検討すると血中Zn単独患者群並びに健常対照群に比し, 特にその値は, 中等症群, 重症群で有意に低値であり, しかも重症ほど低値であった. そこで, AD患者ないしBAを併発するAD患者において, 血中Zn濃度を健常者の-1SDとされる80μg/dl以上群と未満の群に分けてIgEの値を比較すると, 80μg/dl未満の群が, 80μg/dl以上群よりも高値を示す傾向にあったが, 推計学的には有意ではなかった. AD患者ないしはBAを併発するAD患者のADの重症度と血中Zn濃度の関係を見ると, 重症群が血中Zn濃度の80μg/dl未満の群に多かった. また, 一部の症例で経口Znの投与により, 皮膚症状の軽快が認められた. さらに, 毛髪中のZn濃度の比較において, AD患者ないしはBAを併発するAD患者は対照群の健常者に比し, 有意に低値であった (p<0.01). それ故, ADの成立にZnが何らかの形で関与している可能性のあることが示唆された.