日本小児アレルギー学会誌
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12 巻, 3 号
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  • 岡部 俊成, 飛田 正俊, 竹田 幸代, 向後 俊昭, 野呂瀬 嘉彦, 大国 寿士, 小野塚 春吉
    1998 年 12 巻 3 号 p. 244-253
    発行日: 1998/10/15
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    アトピー性皮膚炎 (atopic dermatitis, AD) における亜鉛 (Zinc, Zn) の関与について検討した. AD患者群並びに気管支喘息 (bronchial asthma, BA) を合併するAD患者群の血中Zn濃度を, ADの重症度でグループ分けして検討すると血中Zn単独患者群並びに健常対照群に比し, 特にその値は, 中等症群, 重症群で有意に低値であり, しかも重症ほど低値であった. そこで, AD患者ないしBAを併発するAD患者において, 血中Zn濃度を健常者の-1SDとされる80μg/dl以上群と未満の群に分けてIgEの値を比較すると, 80μg/dl未満の群が, 80μg/dl以上群よりも高値を示す傾向にあったが, 推計学的には有意ではなかった. AD患者ないしはBAを併発するAD患者のADの重症度と血中Zn濃度の関係を見ると, 重症群が血中Zn濃度の80μg/dl未満の群に多かった. また, 一部の症例で経口Znの投与により, 皮膚症状の軽快が認められた. さらに, 毛髪中のZn濃度の比較において, AD患者ないしはBAを併発するAD患者は対照群の健常者に比し, 有意に低値であった (p<0.01). それ故, ADの成立にZnが何らかの形で関与している可能性のあることが示唆された.
  • 重田 政樹, 橋本 光司, 小田島 安平, 臼井 弘人, 清水 達也, 吉川 弘二, 原田 研介
    1998 年 12 巻 3 号 p. 254-261
    発行日: 1998/10/15
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    気管支喘息児は手術時の合併症発生頻度が一般患児より高いことが知られているが, 合併症の発症原因は分析が困難な事が多い. そこで, この研究では従来の検討とは異なり, 小児科・麻酔科・手術担当科についてそれぞれの問題点を明確化し, 診療科毎の具体的な改善すべき点を検討した. 小児科の問題点として, 外来医と病棟医の連携不足, 周術期の管理方針の不統一, アレルギー担当医の参画不足などの問題があった. 手術担当科の領域では, 喘息重症度の評価, 術前アレルギー歴聴取の方法に, 麻酔科領域では, 麻酔前投薬の投与経路や気道確保の方法などに再考すべき点があった. 改善策として (1) 施設の実情にあったアレルギー疾患児のための周術期管理マニュアルを導入し知識の均一化を計る. (2) 手術が計画された場合は気管支喘息合併手術のリスクについて手術担当科へ情報を提供し, 早期に気管支喘息の術前管理を開始する. (3) 麻酔科が行う術前診察には小児科担当医も積極的に参加し術前状態の評価や麻酔方法について検討する機会を持つ. 以上の3点が特に重要であると考える.
  • 椎貝 典子, 三ッ林 恭子, 山口 博明, 中山 徹, 女川 裕司, 大鹿 栄樹, 三ッ林 隆志, 渡辺 和彦, 栃木 亮太郎, 佐々木 望 ...
    1998 年 12 巻 3 号 p. 262-266
    発行日: 1998/10/15
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    両親の気管支喘息の発症時期が児の喘息発症に及ぼす影響を検討するため, 相対危険を求めた.
    相対危険は次の通りであった. (1) 父にアレルギー疾患がある場合は6.55であり, 母にアレルギー疾患がある場合は3.44であった. (2) 父に喘息がある場合は30.44であり, 母に喘息がある場合は9.78であった. (3) 父に小児期発症のアレルギー疾患がある場合は11.42であり, 母に小児期発症のアレルギー疾患がある場合は5.23であった. (4) 両親のアレルギー疾患の発症時期が小児期発症であった場合は14.27であり, 成人期発症であった場合は5.23であった. (5) 父に小児期発症の喘息がある場合は39.95であった. (6) 父に成人期発症の喘息がある場合は11.42であった.
    両親のアレルギー疾患のうち, 父の小児期発症の喘息が児の喘息発症に最も関与しているものと考えられた.
  • 南部 光彦
    1998 年 12 巻 3 号 p. 267-272
    発行日: 1998/10/15
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    アトピー性皮膚炎とツベルクリン反応 (ツ反) との関係について調査, 検討を行った. ツ反陽性者 (発赤長径10mm以上) の比率は, アレルギー性疾患 (アトピー性皮膚炎, 気管支喘息, アレルギー性鼻炎, アレルギー性結膜炎) のない児 (NA群) 524人/760人 (69%), アトピー性皮膚炎以外のアレルギー性疾患の既往がある児, あるいは罹患している児 (AL群) 97人/146人 (66%), アトピー性皮膚炎の既往がある児, あるいは罹患している児 (AD群) 53人/97人 (55%) であった. AD群はNA群に比較し, ツ反陽性率が有意に低かった. 治療を受けている者を除いても, AL群, NA群に比較し, AD群のツ反陽性率は低かった. また, BCG接種1年後のツ反陽転率をみても, AD群はNA群に比較して低かった. 一方, 48時間後のツ反陰性者のうち, 72時間後に陽性となった者の割合は, 各群間に有意な差はなかった. アトピー性皮膚炎児におけるツ反陽性率の低下, BCG陽転率の低下は, アトピー性皮膚炎の病態を反映していると考えられた.
  • 皮膚テスト, 白血球ヒスタミン遊離試験およびスキンチャンバー法での検討
    笹本 和広, 飯倉 洋治
    1998 年 12 巻 3 号 p. 273-280
    発行日: 1998/10/15
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    薬剤過敏症の診断には詳細な問診の他に皮膚テストやDLST等の検査も参考にされる. 今回, 問診上即時型過敏症と考えられた11ヵ月から11歳までの小児を対象にして, 白血球ヒスタミン遊離試験 (20例), 皮膚テスト (13例) の他に一部 (7例) ではスキンチャンバー法を行ない, その陽性率につき検討を加えた. (1) 白血球ヒスタミン遊離試験の陽性率は55%であったが, Stimulation index は必ずしも Dose-dependent にはならなかった. (2) 皮膚テストは13例中8例で陽性であった. (3) スキンチャンバー法では7例中4例 (57.1%) が陽性であり, 他の診断法と比してほぼ同様の陽性率と考えられた. スキンチャンバー法も加えることにより, 全症例の80%以上の例で何等かの検査が陽性となり, スキンチャンバー法も薬剤過敏症の診断に有用であると考えられた. 現時点ではそれらを組み合わせることにより, 原因薬剤を特定できる例もあるのではないかと考えられた.
  • 田中 秀典, 浅井 朋子, 武田 紹, 影山 里実, 藤田 直也, 志水 麻実子, 岸 真司, 石井 睦夫, 矢守 信昭, 神田 康司, 上 ...
    1998 年 12 巻 3 号 p. 281-287
    発行日: 1998/10/15
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    症例1は5才2ヵ月女児. 3ヵ月前から喘息コントロールのため他院に入院していたが, 呼吸不全のため当院に搬送入院, 直ちに人工換気を施行した. 入院3日目皮下気腫を併発, イソフルレンを23時間投与し入院4日目に抜管できた. 症例2は11才女児. フェノテロールエアロゾル, オルシプレリン吸入等で他院で治療されていた. 当院受診時大発作で, 種々の治療により一旦軽快傾向を示したが, 数時間後増悪し, 人工換気, イソフルレン吸入を開始した. 85時間の吸入とステロイドパルス療法を行い, 入院5日目に抜管した. 2例ともイソフルレンによる明らかな副作用は認めなかった. 症例1では速やかにイソフルレンの効果が見られたが, 症例2ではより長時間の吸入とパルス療法の併用が必要だった. 症例2では重症喘息であるにも関らず, 吸入β刺激薬による治療が主で, 十分な抗炎症治療がなされていなかったことが, イソフルレンの効果発現に関与していると推察された.
  • 柏木 保代, 高見 剛, 小西 佐知子, 河島 尚志, 武隈 孝治, 星加 明徳, 中山 哲夫
    1998 年 12 巻 3 号 p. 288-292
    発行日: 1998/10/15
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    生ワクチン接種後のアレルギー反応がゼラチンに対するアレルギーであることがわかり, 近年問題となっている. 今回, 我々はアレルギー患児のゼラチンに対する感作状況と全体としての健康人のゼラチンアレルギーの頻度を知るために, ゼラチン特異IgE抗体を測定した.
    ゼラチンに対する特異的IgE抗体はアレルギー患児で219例中5例 (2.3%) に陽性で, 健常児 (0-15歳代) では551例中で1例 (0.18%) に陽性であり, アレルギー患児において有意に陽性率が高かった. 陽性児の内訳は重症アトピー性皮膚炎3例, 喘息患児2例であった. ゼラチンに対する特異的IgE抗体陽性児の5例はいずれもゼラチンを含んだワクチン接種後に副反応を認めた事はなく, ゼラチンを含む食物に対しても臨床的にアレルギー症状はなかった. また, 健常児296例で麻疹ワクチン接種前後にペア血清でゼラチン特異的IgE抗体を検索したが, 抗体が産生されたものはいなかった.
  • 末廣 豊, 亀崎 佐織, 四宮 敬介
    1998 年 12 巻 3 号 p. 293-298
    発行日: 1998/10/15
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    パルスオキシメーターを用いて, 当科外来を受診した非喘息群, 非発作群, 喘息発作群の酸素飽和度 (SpO2) を測定した. 機種および機器による誤差を避けるため, 終始一台のパルスオキシメーターにて, 脈波を確実に拾っていることを確認しながら測定した. 結果は, 非喘息群 (n=118) 98.1±0.7%, 非発作群 (n=127) 97.9±0.8%, 小発作 (n=31) 96.7±0.7%, 中発作 (n=34) 95.7±1.6%, 大発作 (n=36) 91.4±4.2%であった. 非喘息群と非発作群の間には有意差はなかったが, 他の各群間にはすべての組み合わせにおいて有意差が認められた. このことから, 1) SpO2の正常値は96.7%以上, 2) 小児気管支喘息の非発作時はSpO2は正常で, 酸素化に関しては可逆性を保っている, 3) 小発作の半数は96.7%より低値で, すでにSpO2は低下している, 4) 発作強度が増すにつれSpO2は低下していくが, 中, 大発作になるにつれてばらつきが大きくなることがわかった.
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