抄録
サイクロスポリンD (CSD) およびCSHが脱顆粒抑制剤として臨床的に使用できる可能性があるかを検討する目的で, これらの薬物の脱顆粒抑制作用を, ラットの肥満細胞腫RBL-2H3細胞をもちいて検討し, 臨床的に使用されている免疫抑制剤CSAと比較した. 脱顆粒の指標として, IgEレセプターを介した即時型反応により上清中に放出される細胞内酵素のひとつである beta-hexosaminidase の酵素活性を測定した. CSDおよびCSAは濃度依存性に脱顆粒を抑制したが, CSHはまったく抑制作用を示さなかった. CSDのIC50は0.27μg/mlであり, CSAの0.15μg/mlに比較して脱顆粒抑制作用がやや弱かった. その他に検討をくわえた免疫抑制剤のうち rapamycin は抑制作用を認めなかったが, FK506は強力な阻害作用を示し, そのIC50は0.0064μg/mlであった. 抗炎症剤であるDSCGおよび dexamethasone は作用を認めなかった. サイクロスポリンのT細胞機能抑制による免疫抑制作用と, 脱顆粒阻害作用とは必ずしもその程度が一致しているわけではなく, その作用機序を明らかにすることにより, アレルギー疾患に有用な薬物の開発につながる可能性がある.