日本小児アレルギー学会誌
Online ISSN : 1882-2738
Print ISSN : 0914-2649
ISSN-L : 0914-2649
14 巻, 2 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 赤坂 徹
    2000 年 14 巻 2 号 p. 167-175
    発行日: 2000/06/01
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    小児期においても気管支喘息 (喘息) は心身症の定義である「その発症や経過に心理・社会的因子 (心因) が密接に関与し, 器質的ないし機能的障害が認められる」ことから, 心身医学的アプローチが必要とされている. 小児期に発症した喘息が発達的課題の獲得を障害し, その後の経過を修飾している. 喘息発作をめぐる親子関係をみると, 親に邪魔者扱いにされ, 口やかましく注意され, 要求されたことは何でもしてもらえ, 気分次第で意見が変わると感じていたが, 親は気づいていなかった. 保護者に問題点の気づきを促し, 医療現場には心理スタッフの配置が早急に望まれる. 心理療法は個別と集団で実施されるが, 小児科医は心理士, 小児精神科医らとの連携を取りながら, 看護婦, 指導員, 保育士を含めた医療チームのまとめ役を勤め, 心理・社会的問題を持つ時に利用できる教育機関や福祉施設を選択できることが望ましい.
  • ホルター心電図を用いた自律神経機能の定量的評価から
    松原 和樹, 杉本 日出雄
    2000 年 14 巻 2 号 p. 176-181
    発行日: 2000/06/01
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    施設入院療法中の気管支喘息児12名を対象にホルター心電図を用いて, 冷水浴前後での副交感神経機能を測定し, あわせて呼吸機能及び心拍数を経時的に測定した. 心電図記録は“RR間隔スペクトル分析ソフトHPS-RRA”Ver. 2.01を使用して副交感神経機能を表すとされているRR50 (先行するRR間隔に比し, 50msec以上異なる洞調律RR間隔の出現個数) の心拍変動を解析した. 測定第1日目は冷水浴を行わずコントロールとし, 測定第2日目に冷水浴を15分毎に5回行った. その結果, 1) 冷水浴前後で副交感神経の活動が有意に低下していた, 2) 冷水浴群とコントロール群を比較すると副交感神経機能は冷水浴3回目に冷水浴群で有意に低下していた, 3) 呼吸機能は冷水浴群では改善傾向を認めたものの有意差はなかった. 4) 心拍数は冷水浴群で冷水浴前後で有意に心拍数の上昇を認めた. 以上より冷水浴によって副交感神経活動は抑制され交感神経活動は刺激され呼吸機能を改善することが示唆された.
  • 他の免疫抑制剤/抗炎症剤との比較
    浜崎 雄平, 辻 功介, 宮崎 倫子, 人見 知洋, 早崎 理香, 在津 正文, 山本 修一, 室英 理子, 小林 育子, 市丸 智浩, 宮 ...
    2000 年 14 巻 2 号 p. 182-188
    発行日: 2000/06/01
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    サイクロスポリンD (CSD) およびCSHが脱顆粒抑制剤として臨床的に使用できる可能性があるかを検討する目的で, これらの薬物の脱顆粒抑制作用を, ラットの肥満細胞腫RBL-2H3細胞をもちいて検討し, 臨床的に使用されている免疫抑制剤CSAと比較した. 脱顆粒の指標として, IgEレセプターを介した即時型反応により上清中に放出される細胞内酵素のひとつである beta-hexosaminidase の酵素活性を測定した. CSDおよびCSAは濃度依存性に脱顆粒を抑制したが, CSHはまったく抑制作用を示さなかった. CSDのIC50は0.27μg/mlであり, CSAの0.15μg/mlに比較して脱顆粒抑制作用がやや弱かった. その他に検討をくわえた免疫抑制剤のうち rapamycin は抑制作用を認めなかったが, FK506は強力な阻害作用を示し, そのIC50は0.0064μg/mlであった. 抗炎症剤であるDSCGおよび dexamethasone は作用を認めなかった. サイクロスポリンのT細胞機能抑制による免疫抑制作用と, 脱顆粒阻害作用とは必ずしもその程度が一致しているわけではなく, その作用機序を明らかにすることにより, アレルギー疾患に有用な薬物の開発につながる可能性がある.
  • 女川 裕司, 鈴木 五男, 松本 生, 西間 三馨, 佐々木 望
    2000 年 14 巻 2 号 p. 189-200
    発行日: 2000/06/01
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    最近, アレルギーとの関連のため注目されている再発性クループの臨床像の検討をした. 1976年2, 月から1988年6月まで国立療養所南福岡病院にクループ症候群のため入院した40例の中で2回以上再発したものは4例 (10%) であった. その4例と埼玉県立寄居こども病院で経験した再発性クループ6例の検討をした. 従来の報告同様に男児に多く, アレルギーの家族歴・既往歴が濃厚で血清IgEも大部分が高値を示した. このように再発性クループにアレルギーの関与が濃厚であった. 次に, これらを確認するため埼玉県の小学生7131名を対象にアレルギーと再発性に着目したクループ症候群の頻度調査を行った. クループ症候群は1404人 (19.7%) のうちに再発性クループは367人 (5.1%) で, 平均2.8回, 最高11回のエピソードを有していた. クループ症候群, 再発性クループともに, アレルギーの家族歴, 合併・既往は各々70%以上とかなり高率であった. 以上よりクループ症候群の診療の際にはアレルギーの関与も考える必要があると考えられた.
  • 西藤 成雄, 野々村 和男, 青谷 裕文, 島田 司已
    2000 年 14 巻 2 号 p. 201-211
    発行日: 2000/06/01
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    滋賀医科大学小児科アレルギー外来では小児喘息に関するホームページを平成7年9月より開設し, 喘息患者やその家族に情報支援を行ってきた. 平成9年1月より3年間ホームページ利用者に対してアンケートを行い, 利用者の背景や不足している情報について調査した.
    ホームページは全国から閲覧されており, 利用者の年齢は30歳代, 職業は主婦が多かった. 患者の年齢は3~6歳が最も多かった. 感じている不安で最も多かったのが治癒の時期の27.6%であった. そうした不安を最も尋ねやすいのは66.0%が医師と回答した. 喘息の勉強会や講習会の参加経験がある利用者は12.0%であった. 薬剤の副作用に関して全く知らない利用者が25.1%いた. 役に立つ情報, 充実を求めるページとしては「喘息について」「自宅での対応」「お薬や処置」などが多数選ばれていた.
    これからますます普及するインターネットで喘息に関する情報提供を行うことは有効な手段と考えられた. 患者のニーズを探り適切な情報が医療関係者から発信される事が望まれる.
  • 横田 孝之, 足立 雄一, 村上 巧啓, 松野 正知, 五十嵐 隆夫, 尾上 洋一, 足立 陽子, 山元 純子, 岡部 美恵, 板澤 寿子, ...
    2000 年 14 巻 2 号 p. 212-218
    発行日: 2000/06/01
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    我が国では, 気管支喘息児に対するDSCG+β刺激剤定期吸入療法の普及により, 電動式ネブライザーを常備している家庭の割合が諸外国に比して高いと考えられる. 今回, ネブライザーを用いた発作時β刺激剤吸入 (発作時吸入) の実態を明らかにするため, 全国34施設 (大学10, 一般病院16, 開業8) に定期受診中でネブライザーを自宅に有する喘息患者あるいは家族にアンケート調査を行った. 対象 (768例) の年齢は6歳以下が過半数を占め, 全体の92.3%がネブライザーを発作時吸入に使用していた. 6歳以下の乳幼児の半数以上が咳症状だけで発作時吸入を行い, 全体の20.3%の者が医師の指示より軽い状態で吸入していたが, 使用するβ刺激剤の量は全体の97.4%が医師の指示通りと解答した. また, 発作時吸入の間隔を3~4時間とする者が全体の52.9%を占めていた. 以上より, 多くの乳幼児が家庭でネブライザーを用いた発作時吸入を行っており, 今後乳幼児におけるネブライザーを用いた発作時吸入について, より明確な指導指針が必要であろう.
  • 日本小児アレルギー学会・喘息死委員会 , 鳥居 新平, 赤坂 徹, 松井 猛彦, 西間 三馨, 三河 春樹
    2000 年 14 巻 2 号 p. 219-231
    発行日: 2000/06/01
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    1990年から1999年10月までに登録された喘息死のうち発作以外による死亡例10例を除くと160例になるが, その他記載不明例を除き, 主として158例について解析した.
    今回はとくに喘息死の経時的変化を観察するために1998年から1994年までと1995年から1998年までの2グループに分けて解析した.
    男女比は前半が70/35に対して後半が28/25であり, 低下傾向がみられた.
    重症度に関しては前半と後半で差をみとめなかった.
    死亡に関与した要因に関してはこれまでの成績通り, 予期せぬ悪化が最も多く, 前半に比べ, 後半では増加傾向がみられた. 適切な受診時期の遅れは減少傾向がみられた.
    薬剤過剰投与が喘息死の要因, あるいはその疑いがあるとされた例は21例であるが, 14例が定量噴霧式吸入器 (MDI) 使用例であった. そのうち64%が feneterol 使用例であり, 14%が tulobuterol 使用例であった.
feedback
Top