抄録
先天性心疾患の診断, 治療技術の進歩に伴いFontan型手術の成績は向上し, 同時にさまざまな心外合併疾患を持つ患児が増加している. これらの心外合併疾患の中には小児外科領域の消化器・呼吸器疾患も多く含まれ, 特に消化器領域では手術手技の低侵襲化などの観点から腹腔鏡手術が急速に広まっている. また, 腹腔鏡手術時には炭酸ガスによる気腹, 横隔膜挙上, 陽圧人工呼吸, 頭低位などから中心静脈圧上昇, 胸腔内圧上昇を来し, 肺循環に駆出ポンプを持たない受動的肺循環となるFontan型循環では不利に働く要素が多い. しかしFontan型手術後患児に対する腹腔鏡手術の報告は少ない. 今回, われわれはFontan型手術後患児に対して腹腔鏡手術を施行し, 安全に周術期を経過した3症例を経験した. 術前状態のよいFontan型手術後の患児では, 術前からの関連各科の十分なコミュニケーションの下で腹腔鏡手術は安全に行うことができる.