日本小児循環器学会雑誌
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29 巻, 1 号
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巻頭言
Reviews
  • 佐地 勉
    2013 年 29 巻 1 号 p. 3-10
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/02/20
    ジャーナル オープンアクセス
    Down症候群(DS)に伴う遺伝子異常は研究の途上であり, Alzheimer病を基本とした神経系細胞の研究に比べ, CRELD1GATA4関連心奇形, 肺動脈の組織変化に関連する経路の研究はやや乏しい感がある. 基本的には, おおむね房室中隔欠損(AVSD)に伴う肺動脈性肺高血圧(pulmonary arterial hypertension:PAH)のリスクに関してはコンセンサスが得られているが, 臨床医として適切な検査時期, 多彩なPAH増悪因子, そして治療介入時期の判断を間違わなければ, 非DSと同程度の手術成績が得られることに関しては全く同感である. 特に呼吸器系の低形成は肺気腫に類似した組織像であり, 肺血管壁の構築もストレスに対して肥厚しやすく, 二次性または合併症PAHへの進展が懸念される. 発見後150年, 染色体異常確認後50年が過ぎたこの症候群についてはさらなる研究成果の臨床への応用が, DS患者に多くの光を与えるであろう.
  • 廣瀬 圭一, 村上 新, 宮田 裕章, 松村 剛毅, 小沼 武司, 高岡 哲弘, 高本 眞一
    2013 年 29 巻 1 号 p. 11-16
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/02/20
    ジャーナル オープンアクセス
    日本先天性心臓血管外科データベース(Japan Congenital Cardio-Vascular Surgery Database, 以下JCCVSD)は2007年にワーキンググループを立ち上げ, 2008年より入力開始後, 飛躍的に参加施設が増え, 現在, 成人心房中隔欠損手術を除く国内の先天性心臓血管外科手術のほぼ全症例を網羅するに至った. 入力数が増加した今, そのデータを利用し, 発信していくことが国際的にもJCCVSDの信頼性を高め, 手術成績の向上につながると考えられる. また, データの信頼性を裏付けるものとして現場視察は重要であり, 昨年より開始した. 外部委員による視察結果は良好であったが, 合併症に関してはばらつきがみられた. 一方, 専門医認定機構がその認定基準にデータベースを利用することが決定し, 対応を迫られることとなった. 特に, 外科専門医申請のために症例データベース(NCD)を1階, JCCVSDを2階として階層化システムを構築する必要が生じた. 状況の変化に対しJCCVSDが永続性を保ちつつ成長を遂げるまでにはルールの設定や改変に一定の時間が必要であろう.
  • 三谷 義英
    2013 年 29 巻 1 号 p. 17-26
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/02/20
    ジャーナル オープンアクセス
    2013年に第5回肺高血圧国際シンポジウム(ニース)が予定されるなか, 小児肺高血圧と先天性心疾患に伴う肺血管病変, 特に肺高血圧治療薬の効果の大規模データ, 小児肺動脈性肺高血圧の疫学と分類, 遺伝子型表現型関連と病態, 患者肺・新規動物モデルを用いた橋渡し研究, アイゼンメンジャー症候群の疫学と治療, フォンタン群・低形成肺動脈群への肺高血圧治療薬の応用に関して, 2008年, 第4回肺高血圧国際シンポジウム(ダナポイント)以降の知見を中心に概説する. 今後, 血管生物学, 分子細胞生物学などのミクロの生物学と大規模登録研究に基づくマクロの臨床・疫学像が, 分子遺伝学, ヒト肺検体・ヒト肺動脈性肺高血圧類似動物モデルの血管医学研究を基盤として融合され, 本症の病因, 病態の理解の進歩と新たな治療法開発に繋がることが期待される. 肺高血圧, 肺循環障害, 右室不全など「右心系」の研究が, 血管医学, 心不全の新たな領域として発展することが期待される.
原著
  • 伊藤 健一郎, 青墳 裕之, 中島 弘道, 東 浩二, 江畑 亮太, 脇口 定衛, 藤原 直, 青木 満, 萩野 生男, 山本 昇, 中村 ...
    2013 年 29 巻 1 号 p. 27-33
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/02/20
    ジャーナル オープンアクセス
    背景:主要体肺側副血行(MAPCA)を有する先天性心疾患は多岐にわたり, その臨床経過には不明な点が多い.
    方法:1988年10月以降2011年6月までに経験したMAPCAを有する先天性心疾患患者を対象に, その臨床像を後方視的に検討した.
    結果:症例は32症例で男25例, 女7例, 調査時年齢は9.7±7.7歳であった. 二心室修復対象症例27例のうち二心室修復術到達例が15例であった. 単心室修復対象症例5例中1例でFontan型手術を施行した. 死亡例は10例で, 突然死が5例, 敗血症, 心不全, 肺高血圧, 頭部外傷, 喀血が各1例であった. 非致死的合併症は13例に認められ, 喀血4例, 発作的チアノーゼ増悪3例, 不整脈2例, 脳膿瘍, 心内膜炎, MAPCAによる気管狭窄, 術後縦隔炎が各1例であった. 突然死症例のうち2例で発作的チアノーゼ増悪の既往があった. 発作的チアノーゼ増悪を起こした患者2例の心臓カテーテル検査中, カテーテル挿入によりMAPCAの攣縮が誘発された.
    結論:特に乳児期における状態悪化の際にはMAPCA攣縮を念頭に置いて診療にあたることで, 予後改善につながる可能性がある.
  • 金谷 知潤, 川田 博昭, 盤井 成光, 小澤 秀登, 山内 早苗, 岸本 英文
    2013 年 29 巻 1 号 p. 34-38
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/02/20
    ジャーナル オープンアクセス
    背景:局所陰圧閉鎖療法(negative pressure wound therapy:NPWT)は手術部位感染(Surgical site infection:SSI)の治療として広く受け入れられるようになったが, 小児心臓外科術後のNPWTによるSSIや縦隔洞炎に対するNPWTの報告は少ない.
    目的:2010年1月~2011年1月までの小児心臓外科術後のSSI症例7例(表在性感染4例, 縦隔洞炎3例)に対して施行したNPWTの成績を, NPWTの方法, 有用性, 留意点などの観点から検討すること.
    対象:局所治療を行っても制御できない創部の排膿があり, NPWTを適用した7症例.
    方法:NPWTは親水性ポリウレタンフォームをフォーム材として使用し, ドレーンに側孔を作成, フィルムドレッシング剤で密閉し, 吸引圧を-200~-300 mmHgに設定した. NPWTの吸引圧, NPWTの期間, 原因菌, 再発, 再縫合, NPWT関連の合併症を観察項目とした.
    結果:NPWTの期間は14~106(中央値28)日間で, 原因菌は7例全例でMRSAであった. 感染再発は2例. 創部再縫合を行ったのは2例であった. NPWTに関連した合併症は認めなかった. また全例, 深部縦隔洞炎, 制御不能な敗血症, 全身感染症への進行はなかった.
    まとめ:小児心臓外科手術後のSSIに対し, 7例でNPWTを施行した. 至適吸引圧の設定や感染再発のリスクのあるSSIに対しての治療については検討の余地があるが, NPWTはSSIや縦隔洞炎の治療の選択肢の一つとなり得ると考えられた.
症例報告
  • 菅本 健司, 小川 潔, 星野 健司, 菱谷 隆, 斉藤 千徳, 藤本 義隆, 野村 耕司, 篠原 玄, 山本 祐介, 保科 俊之, 水戸野 ...
    2013 年 29 巻 1 号 p. 43-48
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/02/20
    ジャーナル オープンアクセス
    先天性心疾患の診断, 治療技術の進歩に伴いFontan型手術の成績は向上し, 同時にさまざまな心外合併疾患を持つ患児が増加している. これらの心外合併疾患の中には小児外科領域の消化器・呼吸器疾患も多く含まれ, 特に消化器領域では手術手技の低侵襲化などの観点から腹腔鏡手術が急速に広まっている. また, 腹腔鏡手術時には炭酸ガスによる気腹, 横隔膜挙上, 陽圧人工呼吸, 頭低位などから中心静脈圧上昇, 胸腔内圧上昇を来し, 肺循環に駆出ポンプを持たない受動的肺循環となるFontan型循環では不利に働く要素が多い. しかしFontan型手術後患児に対する腹腔鏡手術の報告は少ない. 今回, われわれはFontan型手術後患児に対して腹腔鏡手術を施行し, 安全に周術期を経過した3症例を経験した. 術前状態のよいFontan型手術後の患児では, 術前からの関連各科の十分なコミュニケーションの下で腹腔鏡手術は安全に行うことができる.
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