日本小児循環器学会雑誌
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原著
小児心臓外科手術後の手術部位感染に対する局所陰圧閉鎖療法
金谷 知潤川田 博昭盤井 成光小澤 秀登山内 早苗岸本 英文
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ジャーナル オープンアクセス

2013 年 29 巻 1 号 p. 34-38

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抄録

背景:局所陰圧閉鎖療法(negative pressure wound therapy:NPWT)は手術部位感染(Surgical site infection:SSI)の治療として広く受け入れられるようになったが, 小児心臓外科術後のNPWTによるSSIや縦隔洞炎に対するNPWTの報告は少ない.
目的:2010年1月~2011年1月までの小児心臓外科術後のSSI症例7例(表在性感染4例, 縦隔洞炎3例)に対して施行したNPWTの成績を, NPWTの方法, 有用性, 留意点などの観点から検討すること.
対象:局所治療を行っても制御できない創部の排膿があり, NPWTを適用した7症例.
方法:NPWTは親水性ポリウレタンフォームをフォーム材として使用し, ドレーンに側孔を作成, フィルムドレッシング剤で密閉し, 吸引圧を-200~-300 mmHgに設定した. NPWTの吸引圧, NPWTの期間, 原因菌, 再発, 再縫合, NPWT関連の合併症を観察項目とした.
結果:NPWTの期間は14~106(中央値28)日間で, 原因菌は7例全例でMRSAであった. 感染再発は2例. 創部再縫合を行ったのは2例であった. NPWTに関連した合併症は認めなかった. また全例, 深部縦隔洞炎, 制御不能な敗血症, 全身感染症への進行はなかった.
まとめ:小児心臓外科手術後のSSIに対し, 7例でNPWTを施行した. 至適吸引圧の設定や感染再発のリスクのあるSSIに対しての治療については検討の余地があるが, NPWTはSSIや縦隔洞炎の治療の選択肢の一つとなり得ると考えられた.

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© 2013 特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
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