2013 年 29 巻 5 号 p. 262-267
背景:デクスメデトミジン塩酸塩(DEX)は本来鎮静薬であるが,近年海外から周術期の小児心房頻拍(AT)・上室頻拍に対して有効との報告が散見されており,今回DEXが有効であった2乳幼児例を後方視的に検討した.
症例1:1歳6ヵ月の男児.多孔性心室中隔欠損,肺動脈絞扼術後で心内修復・肺動脈形成術施行.術後22日目から心拍数(HR)が180回/分のオーバードライブ無効な異所性心房頻拍(EAT)を認め,アミオダロン塩酸塩(AMD)の増量とランジオロール塩酸塩を開始し,鎮静薬・筋弛緩薬を追加したが無効であった.左室駆出分画(EF)が低下しており血圧低下を認めたため,ランジオロール塩酸塩を中止しAMDにDEX 0.7μg/kg/hrを追加し,直ちに洞調律に復帰した.
症例2:2歳2ヵ月の男児.総動脈幹,肺動脈切離・右Blalock-Taussigシャント手術を受け,今回Rastelli術を施行した.術翌日にオーバードライブ無効なHR190回/分のEATを認め鎮静薬・筋弛緩薬に加えてDEX 0.6μg/kg/hrを追加し,直ちに洞調律に復帰した.2例とも徐脈・血圧低下等有意な副作用は認めなかった.
まとめ:DEXは先天性心疾患周術期の小児ATに対して治療効果があり,周術期の低心機能症例でも比較的安全に使用できる有用な鎮静薬である.