日本小児循環器学会雑誌
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29 巻, 5 号
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巻頭言
Review
  • 吉永 正夫
    2013 年 29 巻 5 号 p. 212-217
    発行日: 2013/09/01
    公開日: 2013/10/12
    ジャーナル オープンアクセス
    学校心臓検診(以下,心臓検診)が始まって半世紀以上が経過している.心臓検診により突然死する可能性のある心疾患児が多数抽出され,突然死の予防に貢献している.小児循環器医も心臓検診から多くのことを学び,心臓検診で得られたデータにより小児循環器学の内容が一新された項目も少なくないと考えられる.心臓検診が特定の地域だけでなく全国的に行われているのは日本だけである,という事実もある.ところがこれらの事実は外国ではほとんど知られていない.心臓検診の学術的,社会的,あるいは費用対効果についての日本からのデータ発信がうまくできていないことを意味している.検診システムを改善しなければならない時期に来ていることも事実である.私たちは心臓検診から得られる情報発信を続ける必要がある.
原著
  • 鈴木 保之, 大徳 和之, 福井 康三, 福田 幾夫, 今野 友貴, 北川 陽介, 大谷 勝記, 高橋 徹, 米坂 勧
    2013 年 29 巻 5 号 p. 218-224
    発行日: 2013/09/01
    公開日: 2013/10/12
    ジャーナル オープンアクセス
    目的:成人期(17歳以上)に行われたFontan手術の中期遠隔期成績を検討する.対象:1998年以降当院で行われた成人期Fontan手術6例(年齢17~31歳,男性3,女性3)を対象とした.
    方法:手術術式,術前カテーテル検査データ,術後遠隔期のNYHA,胸部X線(心胸郭比),BNP,肝機能評価(AST,T BIL),合併症について後方視的に検討した.
    結果:手術・病院死亡はなく全例生存中である.両方向性グレン手術(BDG)先行の2期的Fontan手術2例,1期的4例で,術式は心内導管1例,心外導管5例でfenestrationは使用していない.術前肺動脈圧(平均):12 ± 3mmHg,肺血管抵抗:1.05 ± 0.61U/m2,PAI:443 ± 152,手術介入が必要な房室弁の逆流はなかった.術前NYHAは全例Ⅱ度で術後Ⅰ度に改善し術後10年まで1度で経過,心胸郭比も術後10年まで変化なく,肝機能は術後10年で正常範囲内,BNPも経過中不変であった.
    結論:成人期Fontan手術の成績は中期遠隔期を含めて小児期での手術と同様に良好であったが,長期の成績はいまだ不明で,今後も注意深い経過観察が必要であると考えられた.
  • 吉田 修一朗, 大橋 直樹, 西川 浩, 久保田 勤也, 今井 祐喜, 櫻井 一
    2013 年 29 巻 5 号 p. 228-232
    発行日: 2013/09/01
    公開日: 2013/10/12
    ジャーナル オープンアクセス
    背景:小児に対する植え込み型除細動器(ICD)の植え込み数は少なく,全体の1%以下である.また合併症や長期にわたるフォローアップ等を考慮してICDの適応を慎重に判断する必要がある.
    目的:小児期・青年期にICD植え込みを行った症例を調べ,当院における適応の妥当性,植え込み後の状況について検討を行った.
    方法:18歳以下でICDを植え込んだ6例について,基礎疾患,ガイドラインにおけるICD適応のclass分類,植え込み時の年齢,植え込み方法,植え込み後のショック作動状況,頻拍治療としてのカテーテルアブレーション(ABL)や薬物療法の有無,合併症について検討した.
    結果:6例の基礎疾患は,特発性心室細動2例,ファロー四徴症(TOF)術後,拡張型心筋症,心筋炎後,QT延長症候群(LQTS)が各1例であった.ICD適応は,日本循環器学会ガイドラインを参考にclass Ⅰ 5例, 分類不能 1例と判断した.ICD施行時年齢は12.9(3.8~17.9)歳であり,経静脈アプローチ5例,外科的アプローチ1例であった.ICDのフォローアップは平均3.0(0.8~4.9)年,ショック回数は適切作動3例,計4回であり,心房頻拍による不適切作動が1例,計4回あった.カテーテルアブレーション(ABL)は6例中2例で施行.一方頻拍発作予防としての薬物療法は5例で併用されていた.フォローアップ期間中,治療を要する合併症は認めなかった.
    結語:小児期・青年期におけるclass Ⅰの症例では半数以上でICDの適切作動を認め,適応は妥当であったと判断した.フォローアップ期間中,治療を要する合併症は認めなかった.小児期・青年期であっても,必要症例では,積極的にICDを植え込むことにより生命予後の改善が期待できる.
  • 前田 潤, 古谷 喜幸, 稲井 慶, 小穴 慎二, 梶野 浩樹, 上砂 光裕, 松裏 裕行, 松岡 瑠美子, 森 克彦, 須田 憲治, 飯島 ...
    2013 年 29 巻 5 号 p. 236-242
    発行日: 2013/09/01
    公開日: 2013/10/12
    ジャーナル オープンアクセス
    背景と方法:チアノーゼ性先天性心疾患(CCHD)に伴う脳膿瘍の診断,治療,転帰を疫学的に明らかにする目的で,日本小児循環器学会心血管疾患の遺伝子疫学委員会所属施設に横断的アンケート調査を行った.
    結果:90例が報告され,生存75例(83%),死亡6例(7%),転帰不明9例だった.症状が記載された83例中45例(54%)で,脳膿瘍診断時に意識障害,けいれん,麻痺などの神経学的症状が認められた.90例中17例(19%)に上気道炎,胃腸炎などの先行感染があった.歯科治療後の発症が8例(9%)あり,うち7例(88%)で抗菌薬予防投与が行われていなかった.細菌培養検査が行われた42例中32例(76%)で起因菌が同定され,口腔内に常在する連鎖球菌属が最も多かった(53%).発症時のCRP値は72%で1mg/dL以下であった.神経学的後遺症は生存75例中31例(41%)に認められ,発症時に神経学的症状を呈した症例で有意に頻度が高かった(p<0.01).
    考察:CCHDに伴う脳膿瘍においては,発症時の炎症反応は低値であること,歯科治療時の抗菌薬予防内服がその発症を抑制する可能性があること,発症時の神経学的症状が後遺症のリスクに相関することが示唆された.
症例報告
  • 吉永 大介, 石塚 潤, 荻野 佳代, 林 知宏, 脇 研自, 新垣 義夫
    2013 年 29 巻 5 号 p. 244-250
    発行日: 2013/09/01
    公開日: 2013/10/12
    ジャーナル オープンアクセス
    Fontan術後の蛋白漏出性胃腸症(PLE)に対しトルバプタンを使用してPLEが改善した2症例を報告する.症例1は無脾症候群,右胸心,共通房室弁口,単心室,肺動脈閉鎖,総肺動脈還流異常症(TAPVC)のFontan術後の8歳男児.アルブミン補充,ステロイド投与にもかかわらずAlb2g/dL台,TP 3g/dL台と低値だったが,トルバプタン投与後より正常範囲内となりステロイドを漸減できた.またPLEによる下痢も改善し普通便となった.症例2は多脾症候群,単心室,共通房室弁口,両大血管右室起始,肺動脈閉鎖,下大静脈欠損(奇静脈交通)に対するFontan術後の19歳男性.トルバプタン投与前はAlb 2.0g/dL,TP 4.0g/dLだったがトルバプタン投与により正常範囲内に回復し,腹水も軽減した.トルバプタンがFontan術後PLEに対する内科的治療の一選択肢となりうる可能性が示唆された.
  • 小野 隆志, 森島 重弘, 中澤 誠, 工藤 恵道
    2013 年 29 巻 5 号 p. 254-259
    発行日: 2013/09/01
    公開日: 2013/10/12
    ジャーナル オープンアクセス
    冠静脈洞と左房間の全隔壁が欠損するcompletely unroofed coronary sinusと左上大静脈遺残(PLSVC:persistent left superior vena cava)が合併する場合は,左上大静脈左房還流となる.この疾患が内臓心房正位に存在することは稀であるが,今回われわれは,左上大静脈左房還流と三心房心様の左房内異常隔壁を合併した不完全型房室中隔欠損症の内臓心房正位症例に対して修復術を施行した.症例は5歳女児.出生後早期に,不完全型房室中隔欠損症,三心房心,PLSVCと診断されていたが,チアノーゼの増悪や心不全なく無投薬で外来フォローアップされていた.心エコー検査上,左側房室弁閉鎖不全症(LAVVR:left atrioventricular valve regurgitation)が増強してきたため,手術を前提に入院精査した.Multidetector computed tomography(MDCT)と心臓カテーテル検査により,左上大静脈左房還流と三心房心様の左房内異常隔壁を合併した不完全型房室中隔欠損症と診断され,同時手術を施行した.心房内血流転換による左肺静脈還流障害の発生を危惧し左上大静脈は自己組織を使用しての心外ルート再建とした.
  • 藤本 一途, 喜瀬 広亮, 藤井 隆成, 櫻井 茂, 伊藤 篤志, 石野 幸三, 富田 英, 上村 茂, 大山 伸雄, 曽我 恭司
    2013 年 29 巻 5 号 p. 262-267
    発行日: 2013/09/01
    公開日: 2013/10/12
    ジャーナル オープンアクセス
    背景:デクスメデトミジン塩酸塩(DEX)は本来鎮静薬であるが,近年海外から周術期の小児心房頻拍(AT)・上室頻拍に対して有効との報告が散見されており,今回DEXが有効であった2乳幼児例を後方視的に検討した.
    症例1:1歳6ヵ月の男児.多孔性心室中隔欠損,肺動脈絞扼術後で心内修復・肺動脈形成術施行.術後22日目から心拍数(HR)が180回/分のオーバードライブ無効な異所性心房頻拍(EAT)を認め,アミオダロン塩酸塩(AMD)の増量とランジオロール塩酸塩を開始し,鎮静薬・筋弛緩薬を追加したが無効であった.左室駆出分画(EF)が低下しており血圧低下を認めたため,ランジオロール塩酸塩を中止しAMDにDEX 0.7μg/kg/hrを追加し,直ちに洞調律に復帰した.
    症例2:2歳2ヵ月の男児.総動脈幹,肺動脈切離・右Blalock-Taussigシャント手術を受け,今回Rastelli術を施行した.術翌日にオーバードライブ無効なHR190回/分のEATを認め鎮静薬・筋弛緩薬に加えてDEX 0.6μg/kg/hrを追加し,直ちに洞調律に復帰した.2例とも徐脈・血圧低下等有意な副作用は認めなかった.
    まとめ:DEXは先天性心疾患周術期の小児ATに対して治療効果があり,周術期の低心機能症例でも比較的安全に使用できる有用な鎮静薬である.
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