日本小児循環器学会雑誌
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症例報告
乳幼児期に植込み型除細動器を植込んだ先天性QT延長症候群の1例:植込み方法とその経過について
後藤 浩子桑原 直樹面家 健太郎寺澤 厚志小嶋 愛岩田 祐輔竹内 敬昌桑原 尚志
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2014 年 30 巻 1 号 p. 74-78

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抄録
胎児期より2:1房室ブロックを指摘され,出生後に先天性QT延長症候群(LQTS)と診断された男児.メキシレチンの投与を受けていたが,1歳11ヵ月の午睡中に意識消失,四肢硬直しているのを母親に発見された.ただちに心肺蘇生が開始され,救急隊により心室細動(VF)の確認後に除細動および心臓マッサージを行われ洞調律に復帰した.重篤な神経学的後遺症を残すことなく回復したが,その後もtorsade de pointesを繰り返し,植込み型除細動器(ICD)を植込みとなった.後日の遺伝子検査にてLQT3と判明した.乳幼児期のICD植込みの手技については確立されておらず,その後の経過報告も少ない.乳幼児では経静脈的な心内膜リード留置が困難であり,開胸による留置が一般的である.しかし心外膜にリードを留置する方法では,拡張障害による心不全や癒着によるリード抜去困難などが懸念される.そこで,われわれは皮下に留置した経静脈心内膜用除細動電極リードと腹直筋下のICD本体とで除細動を行う方法を選択した.植込み後5年の間に,持続するVFに対し計5回のショック通電が適切に行われ,誤作動はなかった.また,電池消耗のためにICD本体のみの交換を1回行ったが,その後も適切に除細動が行われた.乳幼児期においてもICD植込みが安全かつ大変有用であった.VFや蘇生の既往があるハイリスクのLQTS患者では,乳幼児においても積極的に検討する必要があると考えられた.
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© 2013 特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
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