日本小児循環器学会雑誌
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原著
左室流出路狭窄を伴う完全大血管転位,両大血管右室起始症に対する一心室修復の治療成績
盤井 成光川田 博昭上仲 永純山内 早苗荒木 幹太萱谷 太稲村 昇岸本 英文
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2014 年 30 巻 2 号 p. 147-152

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抄録

目的:左室流出路狭窄(LVOTO)を合併した完全大血管転位症(TGA)あるいはTGA型両大血管右室起始症(DORV)に対して,術後遠隔期のLVOTOを回避するために,われわれはFontan手術を積極的に行ってきた.そこで今回,これらの症例に対する一心室修復と二心室修復の治療成績を検討した.
方法:Definitive repairに到達したLVOTOを伴うTGA,DORVの21例を対象とし,Fontan手術を行った16例(F群)とRastelli手術を行った5例(R群)に分け比較検討した.
結果:Definitive repair後観察期間はF群最長16年(中央値4年),R群最長19年(中央値15年)で,早期死亡はなく,遠隔死はF群1例(突然死)のみ.再手術はF群なし,R群3例,4回(右室流出路再建2例,左室流出路再建+右室流出路再建2例).心事故回避率は15年でF群94%,R群40%であった.術後1年の心臓カテーテル検査では,LVEDPはR群で高値であり,R群の3例にLVOTOを認めた.またLVEF,CIは2群間で差がなかった.術後5年以上経過例の心機能はいずれも良好に保たれていたが,hANP・BNPはF群全例でほぼ正常値であったのに対し,R群の3例に異常高値を認めた.さらにR群に運動制限や不整脈治療を要する症例があった.
結論:LVOTOを合併したTGAあるいはTGA型DORVに対して,一心室修復はその長期予後から選択肢になり得る術式と考えられた.

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© 2013 特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
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