抄録
薬物療法を適正に行うには,臨床試験で得られる薬物動態,有効性や安全性,用法・用量に関するエビデンスが不可欠である.医師が臨床研究を科学的,倫理的に適切に実施することは,医療の面から極めて重要であり,各領域の専門医にはその知識が求められる.臨床研究により得られる情報が科学的に信頼できるものであることはいうまでもないが,臨床研究に参加される被験者に対する安全性の確保と倫理的な配慮は同様に不可欠であり,そのための規則を遵守し,適切に実施されなければならない.また,研究者である医師と被験者である患者の関係を考えると,第三者の立場から臨床研究実施について公正かつ中立に評価する第三者的委員会の存在も極めて重要である.
臨床研究に携わる医師は,単にエビデンスの収集を目的とするだけでなく,臨床研究に関する規則や体制についての知識を習得し,社会的に評価される研究を行う姿勢が必要である.