抄録
姑息手術の多くは,肺血流調整を目的に行われ,特に肺血管抵抗の高い新生児期に適応される.修復術が低年齢化し,早期の一期的修復術が進んだ現在でも,体・肺動脈短絡術,肺動脈絞扼術の適応が見直され,かつ多様化している.体外循環を用いた修復術や姑息術がより安全に行われるようになった一方で,新生児期の体外循環を回避し,周術期,遠隔成績のさらなる成績向上のため,両側肺動脈絞扼術のように復活した術式もある.肺血管抵抗が変動する周術期に,いかに適切な肺血流調整が行えるかが重要となる.肺動脈絞扼術においては,なるべく正中切開アプローチを選択し,術中心表面エコーを用いて,適切な肺動脈絞扼部位や絞扼度の決定を行う.体肺動脈短絡術の周術期管理では,複雑な病態把握が必要である.特に単心室の血行動態を理解し,動脈血酸素飽和度に加え,混合静脈血酸素飽和度や近赤外光法など,様々な方法で体・肺血流バランスをモニターすることが重要である.