日本小児循環器学会雑誌
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原著
左心低形成症候群に対する外科治療:3ヶ月Norwood+両方向性Glenn手術と1ヶ月Norwood+右室–肺動脈シャント手術の比較
山内 早苗川田 博昭盤井 成光小森 元貴富永 佑児萱谷 太稲村 昇岸本 英文
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2015 年 31 巻 3 号 p. 102-107

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抄録
目的:左心低形成症候群(HLHS)に対し,我々は,2004年以降,両側肺動脈絞扼術(BPAB)を先行し,生後3ヶ月でNorwood手術(NW)と両方向性Glenn手術(BDG)を行ってきたが,2012年以降はBPAB後1ヶ月でNWと右室肺動脈シャント手術(RV–PA shunt)を行う方針に変更した.目的は,この治療方針の妥当性を検討すること.
対象と方法:2004年1月から2013年12月までに当院でNWを行ったHLHS患者(類似疾患を含む)28例を対象とし,NW+BDG群(G群)22例とNW+RV–PA shunt群(S群)6例とで,手術成績を比較検討した.
結果:NW時,G群では8例(36.3%)に肺動脈形成を行い,術後急性期の肺動脈バルーン拡張術(PTPA)を20例(91.0%)に要し,病院死亡3例,BDG不成立2例(1例は病院死亡症例と同一症例),術後脳梗塞1例を認めたが,S群ではNW時の肺動脈形成や急性期PTPAを要した症例はなく,生後6~13(中央値7)ヶ月でBDGを行った.BDG時に肺動脈形成を要したのは1例のみで,術後の上大静脈(SVC)圧もG群より有意に低く,急性期PTPAも要さなかった.
結論:BPAB後1ヶ月でのNW+RV–PA shunt術は,PTPAの回避と,BDG後のSVC圧を低く保つことができ,手術成績が向上すると考えられた.
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© 2015 特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
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