日本小児循環器学会雑誌
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原著
遠隔期成績からみた完全房室中隔欠損症に対する術式選択の検討
石丸 和彦西垣 恭一金谷 知潤荒木 幹太中村 香絵佐々木 赳藤野 光洋平野 恭悠川崎 有希江原 英治吉田 修一朗吉田 葉子鈴木 嗣敏村上 洋介
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2015 年 31 巻 4 号 p. 184-189

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抄録

目的:完全型房室中隔欠損(cAVSD)に対する各術式の術後遠隔期成績ならびに術式選択について検討すること.
対象と方法:対象は,2000年1月から2012年12月の間に,当院で2心室修復術を施行したcAVSD 29例(21 trisomy 24例).房室弁形態はRastelli type A 20例,type C 9例で,two-patch法を17例(T群),simplified single-patch法を12例(S群)に施行.各群における術前ならびに術中の患者因子ならびに術後心エコー検査による左側房室弁逆流(lt AVVR)を比較し評価した.
結果:S群はT群に比し,心室中隔欠損(VSD)の深さ(8.2±2.0 vs. 5.6±2.3 mm, p=0.001)は浅かった.術後10年でのlt AVVRに対する再手術回避率はT群76%,S群68%で有意差なし(p=0.931).T群の再手術症例は,lt AVVRに対する弁形成術1例,弁置換術3例で,S群は,lt AVVRに対する弁形成術1例,弁置換術1例,左室流出路(LVOT)膜様狭窄解除術1例であった.またT群2例で術中simplified single-patch法からtwo-patch法へ移行し,1例はRastelli type AでVSDは7 mmと深く,simplified single-patch法施行後に共通前後尖が落ち込み,1例はtype CでVSDが前上方進展しており,simplified single-patch法施行後LVOTOを認めた.
結論:cAVSDに対する術後遠隔期成績は両術式とも差はなく,術式選択に関しては,弁尖形態,VSDの深さのみならずその進展方向も考慮すべきと考えられた.

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© 2015 特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
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