日本小児循環器学会雑誌
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31 巻 , 4 号
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巻頭言
Reviews
  • 小林 純子, 佐野 俊二, 王 英正
    専門分野: Review
    2015 年 31 巻 4 号 p. 138-147
    発行日: 2015/07/01
    公開日: 2015/09/10
    ジャーナル オープンアクセス
    2007年にヒト人工多能性幹(induced pluripotent stem: iPS)細胞の樹立に成功して以来,疾患特異的iPS細胞の研究が進められてきた.病態発生過程をin vitroで再現できる疾患特異的iPS細胞は,新たな疾患モデルとして病態解明や創薬のための利用が期待される.疾患特異的iPS細胞は心疾患モデルとしても多数樹立されてきたが,これまでは主に遺伝性の不整脈性疾患や心筋症から樹立されており,形態異常を伴う先天性心疾患からは樹立されてこなかった.最近,我々は左心低形成症候群(hypoplastic left heart syndrome: HLHS)由来の疾患特異的iPS細胞の樹立に成功した.遺伝子異常のみならず,遺伝子発現の低下やエピジェネティック制御の異常など,多数の因子が複雑に関与すると考えられる先天性心疾患の病態解明にも,疾患特異的iPS細胞は有用である可能性がある.本総説では,疾患特異的iPS細胞を用いた心疾患モデルの経緯を概説し,また疾患特異的iPS細胞による先天性心疾患の病態解明への可能性を検討する.
  • 森 善樹
    専門分野: Review
    2015 年 31 巻 4 号 p. 148-156
    発行日: 2015/07/01
    公開日: 2015/09/10
    ジャーナル オープンアクセス
    心エコー,CT,MRIなどの非侵襲的検査法の進歩に従い,心臓カテーテル造影検査はカテーテル治療の目的で施行されることが多くなり,多くの先天性心疾患(以下CHD)の術前のルーチンの検査として施行していた時代と比較してその適応は大きく変わった.現在の診断カテーテルの適応は,1)大動脈弁,僧房弁狭窄の重症度やFontan型手術適応など,より正確な血行動態評価が必要な時,2)心奇形の形態異常が非侵襲的検査法では充分に描出されず評価できない時,3)カテーテル治療を計画し,その前に施行する場合,4)肺動脈閉塞性病変の有無を決定するなど,血行動態評価が治療方針の決めてとなる時,5)電気生理学的検査,または生検が必要な時,などである.このように以前と診断カテーテルの適応は変わったが,未だCHDの,特に複雑心奇形の形態,血行動態を評価する“Gold Standard”な検査として施行されている.このReviewでは酸素飽和度,圧などから計算される血行動態の指標や造影所見などをいかに得て,どう解釈するかについて概説した.
  • 佐地 勉, 中山 智孝, 高月 晋一, 池原 聡, 嶋田 博光, 直井 和之, 佐藤 真理, 松裏 裕行
    専門分野: Review
    2015 年 31 巻 4 号 p. 157-183
    発行日: 2015/07/01
    公開日: 2015/09/10
    ジャーナル オープンアクセス
    小児期PAHの薬物療法を行うにあたって,臨床医は小児は成人と異なり様々な特色があることを再認識しなければならない.すなわち,代謝酵素活性(p450など),受容体の濃度(密度)や感受性,器官の機能発達(特に腎臓と肝臓,心筋代謝),体脂肪の容積,蛋白(アルブミン)結合率,血中蛋白濃度,分散容積,薬物動態PKや薬力学PD,一定の年齢だけ反応する臓器(動脈管など),薬理遺伝子的背景, 遺伝子多型などによる個人差,特異体質,薬物相互作用,生体内活性物質(サイトカイン,ホルモン,伝達物質,カテコラミンなど)の影響である.特に小児期の重症疾患に対しては,“Right drug for the Right patient at Right time”という諺に準じて,その個人に見合った慎重なcase by caseの薬剤選択を心掛けなくてはいけない.小児期の肺高血圧治療薬には,NO-cGMP経路,PGI2-cAMP経路,エンドセリン受容体拮抗薬(ERA)の三大肺血管作動薬を使用する.小児では,世界的にもほとんどがoff-labelの状態で使用されている.しかし肺血管拡張作用以外の,細胞増殖抑制作用,線維化・肥大抑制作用,抗酸化ストレス・抗炎症作用を秘め,長期にわたって血管壁に抗リモデリン作用を発揮する薬剤を選択したい.また特発性(遺伝性,家族性)と二次性肺高血圧(左心不全,膠原病関連,呼吸器関連,肺血栓塞栓関連,そして新生児期肺高血圧など)では,3大治療薬が持つPDE5阻害作用,PGI2産生促進作用,エンドセリン受容体拮抗作用などの有効性もそれぞれ異なると予想される.本稿では,治療薬の小児期でのエビデンスを紹介しながら,最適の治療法を推奨したい.
原著
  • 石丸 和彦, 西垣 恭一, 金谷 知潤, 荒木 幹太, 中村 香絵, 佐々木 赳, 藤野 光洋, 平野 恭悠, 川崎 有希, 江原 英治, ...
    専門分野: 原著
    2015 年 31 巻 4 号 p. 184-189
    発行日: 2015/07/01
    公開日: 2015/09/10
    ジャーナル オープンアクセス
    目的:完全型房室中隔欠損(cAVSD)に対する各術式の術後遠隔期成績ならびに術式選択について検討すること.
    対象と方法:対象は,2000年1月から2012年12月の間に,当院で2心室修復術を施行したcAVSD 29例(21 trisomy 24例).房室弁形態はRastelli type A 20例,type C 9例で,two-patch法を17例(T群),simplified single-patch法を12例(S群)に施行.各群における術前ならびに術中の患者因子ならびに術後心エコー検査による左側房室弁逆流(lt AVVR)を比較し評価した.
    結果:S群はT群に比し,心室中隔欠損(VSD)の深さ(8.2±2.0 vs. 5.6±2.3 mm, p=0.001)は浅かった.術後10年でのlt AVVRに対する再手術回避率はT群76%,S群68%で有意差なし(p=0.931).T群の再手術症例は,lt AVVRに対する弁形成術1例,弁置換術3例で,S群は,lt AVVRに対する弁形成術1例,弁置換術1例,左室流出路(LVOT)膜様狭窄解除術1例であった.またT群2例で術中simplified single-patch法からtwo-patch法へ移行し,1例はRastelli type AでVSDは7 mmと深く,simplified single-patch法施行後に共通前後尖が落ち込み,1例はtype CでVSDが前上方進展しており,simplified single-patch法施行後LVOTOを認めた.
    結論:cAVSDに対する術後遠隔期成績は両術式とも差はなく,術式選択に関しては,弁尖形態,VSDの深さのみならずその進展方向も考慮すべきと考えられた.
  • 名和 智裕, 横澤 正人, 和田 励, 長谷山 圭司, 髙室 基樹
    専門分野: 原著
    2015 年 31 巻 4 号 p. 192-198
    発行日: 2015/07/01
    公開日: 2015/09/10
    ジャーナル オープンアクセス
    背景:消化管閉鎖に先天性心疾患(CHD)を合併する場合には,先行手術,術式の選択など外科的治療戦略が重要になる.当センターにおける消化管閉鎖合併の先天性心疾患の現状と今後の課題を明らかにするために,自験例を後方視的に検討した.
    方法:1979年1月から2011年12月までの32年間に当センターに入院し,治療を受けた消化管閉鎖442例を対象とし,消化管閉鎖合併のCHDを検討した.
    結果:CHDを合併したのは76例であり,食道閉鎖,十二指腸閉鎖,重複合併疾患で合併率は高い傾向にあった.また,CHD合併群は非合併群より死亡率が高かった.CHD合併群に対する外科的治療戦略として,心臓手術よりも消化管手術を先行する例が多かった.食道閉鎖にCHDを合併した場合は,低出生体重児や18トリソミーの合併が多く,現在も予後不良であった.
    結語:CHDを合併した消化管閉鎖の治療成績は向上しているが,食道閉鎖のCHD合併例は現在も予後不良である.
症例報告
  • 菅 敏晃, 吉田 葉子, 吉田 修一朗, 鈴木 嗣敏, 佐々木 赳, 藤野 光洋, 平野 恭悠, 川崎 有希, 江原 英治, 村上 洋介, ...
    専門分野: 症例報告
    2015 年 31 巻 4 号 p. 199-204
    発行日: 2015/07/01
    公開日: 2015/09/10
    ジャーナル オープンアクセス
    患者は特記すべき既往歴や家族歴のない11歳男児.6歳時の学校心臓検診で心室期外収縮と診断され,運動負荷による消失を確認後,年1回経過観察されていた.9歳頃から動悸を自覚,11歳時に頻度が増加し,検診時に自覚症状が初めて明らかとなった.Holter心電図で心室期外収縮は全心拍数の25%,最長50秒の持続性心室頻拍を認め,治療目的で紹介され入院となった.入院時偶発的にリンパ節炎で発熱を認めた.心エコー上,基礎心疾患なく心機能は正常だった.多発する多形性非持続性心室頻拍は,強い動悸の症状を伴った.Landiolol持続静注開始により二段脈まで改善,感染症の治癒後に電気生理検査およびカテーテルアブレーション治療を施行した.右室流出路肺動脈弁直下の不整脈起源に対する高周波通電で不整脈は消失した.術後1年半の経過観察期間で再発はない.小児の心室期外収縮・心室頻拍は単形性の右室流出路起源のものが多く,自然予後は良好である.しかしながら,極めてまれに多形性心室頻拍や心室細動にいたる一群が潜在する.多形性心室頻拍の早期発見のためには,学校検診後の経過観察中であっても,自覚症状の出現に特に注意して問診を行う必要がある.
  • 上村 秀樹
    専門分野: 症例報告
    2015 年 31 巻 4 号 p. 205-211
    発行日: 2015/07/01
    公開日: 2015/09/10
    ジャーナル オープンアクセス
    英国の肺動脈弁置換(PVR)の実状を,1)National database(2000年以降),2)一つの主要施設(2004年以降),3)一人のConsultant Surgeon,の3段階の観点から俯瞰する.
    1)総計7,028例の成人先天性心疾患手術例のうち25%がPVR(1年生存率98%)で,過去10年間に著増した.
    2)PVRを393例に施行,平均32±12歳.ファロー四徴修復術後(242例)および肺動脈狭窄の解除手術後(78例)が主要な病変であった(手術死亡率1.6%).PVRに使用した弁は,生体弁227例,homograftが133例,生体弁付き導管33例であった.
    3)117例の成人期PVR例のうち109例が生体弁.先行修復術において肺動脈弁輪が温存されていた31例では弁輪切開後症例に比べて術前心胸郭比は小さい傾向があった(p=0.009).同時術式として,三尖弁手技29例,外科的抗不整脈処置13例,左・右肺動脈起始部拡大を11例に施行した.88例では心拍動下にPVRを行った.8例では大腿動脈カニュレーションを行った.2例が早期死亡(高度右心不全・心室性不整脈).遠隔死亡はなく,再手術を2例に要した.側弯症を30例に認めた.
    以上より,英国におけるPVRの現況を,全体像とともに,一部において具体的な臨床要因まで提示した.
  • 永田 佳敬, 加藤 太一, 牧田 智, 池田 麻衣子, 深澤 佳絵, 岸本 泰明, 沼口 敦, 長井 典子
    専門分野: 症例報告
    2015 年 31 巻 4 号 p. 212-219
    発行日: 2015/07/01
    公開日: 2015/09/10
    ジャーナル オープンアクセス
    門脈肺高血圧と肝肺症候群の病態はそれぞれ肺血管拡張と血管収縮を特徴とし,病態として対極に位置する.今回我々は,両者の合併を呈した非常に稀な症例で,これまで報告のないNoonan症候群も合併していた症例を経験した.症例は4歳8ヶ月,男児.3歳時に遺伝子検査でNoonan症候群が確定した.出生時から軽症肺動脈弁狭窄と卵円孔開存のため心エコーによる経過観察をしていた.4歳2ヶ月時の心エコーで肺高血圧や肺動脈の拡大は認めなかったが,その後門脈腎静脈シャントが急速に顕在化し,肺高血圧及び肝肺症候群を合併するに至った.ボセンタン,シルデナフィル,在宅酸素療法併用で自覚症状は改善したが,肺高血圧に関するエコー所見は改善しなかった.肝生検と造影CT検査で肝内門脈が確認され,先天性肝外門脈体循環シャントType 2と診断が確定した.シャント結紮術後も肺高血圧は遷延し,半年経過した現在も内服治療を継続しているが,術後肝機能及び肝肺症候群は改善し,運動能も改善を示している.本症例は先天性肝外門脈体循環シャントType 2への門脈肺高血圧と肝肺症候群合併例に,外科的結紮術を初めて行ったものであり,本病態での肺循環の異常に対する治療を確立する上で重要な意義を持つものと考え,詳細を報告する.
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