抄録
門脈肺高血圧と肝肺症候群の病態はそれぞれ肺血管拡張と血管収縮を特徴とし,病態として対極に位置する.今回我々は,両者の合併を呈した非常に稀な症例で,これまで報告のないNoonan症候群も合併していた症例を経験した.症例は4歳8ヶ月,男児.3歳時に遺伝子検査でNoonan症候群が確定した.出生時から軽症肺動脈弁狭窄と卵円孔開存のため心エコーによる経過観察をしていた.4歳2ヶ月時の心エコーで肺高血圧や肺動脈の拡大は認めなかったが,その後門脈腎静脈シャントが急速に顕在化し,肺高血圧及び肝肺症候群を合併するに至った.ボセンタン,シルデナフィル,在宅酸素療法併用で自覚症状は改善したが,肺高血圧に関するエコー所見は改善しなかった.肝生検と造影CT検査で肝内門脈が確認され,先天性肝外門脈体循環シャントType 2と診断が確定した.シャント結紮術後も肺高血圧は遷延し,半年経過した現在も内服治療を継続しているが,術後肝機能及び肝肺症候群は改善し,運動能も改善を示している.本症例は先天性肝外門脈体循環シャントType 2への門脈肺高血圧と肝肺症候群合併例に,外科的結紮術を初めて行ったものであり,本病態での肺循環の異常に対する治療を確立する上で重要な意義を持つものと考え,詳細を報告する.