日本小児循環器学会雑誌
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原著
抗凝固,抗血小板療法中に梗塞,出血のイベントを起こしたフォンタン術後患者の検討
田中 裕治
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ジャーナル オープンアクセス

2015 年 31 巻 5 号 p. 229-237

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抄録

背景:従来フォンタン術後患者に血栓塞栓予防目的で抗凝固,抗血小板治療が行われているが,薬剤使用にあたっての基準が存在しない.
目的:抗凝固,抗血小板治療の現状を把握し,フォロー中に梗塞,出血のイベントを起こした患者の特徴を調べること.
方法:1998~2012年に当科にて外来フォローしたフォンタン術後患者49名を後方視的に検討した.性別は男性34名,女性15名,平均年齢16.3±7.7歳,TCPC手術時年齢4.5±3.7歳,平均術後経過59.1±45ヶ月であった.
結果:ワーファリンは全員,アスピリンは48名が内服していた.梗塞例は脳梗塞3名,腎梗塞1名に認めたが,幸い早期治療で後遺症なく治癒していた.出血例は肺出血3名中1名が死亡,消化管出血を3名で6回経験,5回は緊急輸血が必要であった.他に皮下出血,肉眼的血尿,卵巣出血,過多月経があり,出血イベント時の平均PT-INRは1.9±0.5であった.各々でアスピリン中止やワーファリン減量で対処されていた.
結論:アスピリン,ワーファリン併用が良好なフォンタン循環を保つのかどうかを含め,今後根拠に基づく戦略が必要である.ただし治療にあたっては,出血合併症へ最大限の配慮をして個別に薬物選択を検討しなければならない.

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