抄録
感染性動脈瘤は破裂の可能性が高く,敗血症を合併することが多いため重篤な病態である.今回,先天性心疾患術後のMRSA縦隔炎に合併した感染性腕頭動脈瘤の乳児例を経験した.縦隔炎再燃の際に胸部造影CTで腕頭動脈瘤が判明した.動脈瘤が腕頭動脈を後方に圧排し,気管圧迫も認めていた.動脈瘤破裂の危険もあり準緊急でカバードステント留置を行った.カバードステントはバルーン拡張型の金属ステントにePTFEシートをロール状に縫着し作成した.右内頸動脈から計2個のカバードステントを留置し,動脈瘤は消失し気管圧迫も改善した.長期にわたる抗MRSA薬の併用で縦隔炎も寛解した.手技の合併症として右ホルネル徴候を術後に認めた.破裂の危険が迫る感染性動脈瘤に対してのカバードステント留置は治療の選択肢の一つとなりうる.