日本小児循環器学会雑誌
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症例報告
正常肺組織を犠牲にすることを前提としてコイル塞栓術を施行した両側肺全区域びまん性肺動静脈瘻の1例
本間 友佳子早渕 康信阪田 美穂香美 祥二
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ジャーナル オープンアクセス

2015 年 31 巻 6 号 p. 352-357

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抄録

Endoglin遺伝子(ENG)変異(p. Ala160del, c.479_481 delCTG; ex4)を有した遺伝性出血性毛細血管拡張症に合併した両側肺全区域びまん性肺動静脈瘻の女児例を経験した.9歳で診断され,5年間に5回のカテーテル治療を施行した.コイル塞栓術直後はSpO2 90%以上に上昇するが徐々に80%程度まで繰り返し低下していた.びまん性肺動静脈瘻は,瘻内や流入動脈の塞栓では新たな瘻への流入血管が再度出現・増悪し,瘻への流入血流が増加する.瘻内のみへのコイル塞栓では血流阻害が不十分と考え,以降は正常肺動脈を犠牲にしてコイル塞栓術を施行した.正常肺血管の塞栓は肺血管床を減少させ,肺高血圧を惹起するため最小限にとどめることに留意した.治療後はSpO2 90%以上を維持し,肺高血圧症は認めていない.治療に難渋する肺動静脈瘻では正常肺を犠牲にすることを前提としたカテーテル治療も1つの選択肢と考えられた.今後は長期的な肺高血圧症の発症も含めて,慎重な経過観察が必要である.

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© 2015 特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
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