日本小児循環器学会雑誌
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原著
最近10年間における当院での胎児心エコー診断の変化
河津 由紀子稲村 昇田中 智彦浜道 裕二萱谷 太
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2016 年 32 巻 1 号 p. 31-37

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抄録

背景:近年,本邦でも胎児心エコー検査が普及して先天性心疾患(CHD)の胎児診断例が増加している現状である.
目的:当センターにおける最近の胎児心エコー検査の動向をまとめ,改善点を見出すことを目的とする.
方法:2013年までの10年間に当科の胎児心エコー検査で診断したCHD687例を対象とし,前半5年間の241症例をA群,後半5年間の446症例をB群として後方視的に検討した.
結果:胎児心エコー検査施行例中のCHD有病率は,A群241例(29.1%),B群446例(49.0%)とB群で有意に高かった(p<0.01).紹介理由は両群ともにCHD疑い,先天異常,胎児発育不全の順で多く,2群間での有意差はなかった.在胎22週未満のCHD症例数は,A群36例(14.9%),B群91例(20.4%)であり,B群において有意に多かった(p<0.05).軽症CHD症例数は,A群101例(41.9%),B群235例(52.7%)であり,B群において有意に多かった(p<0.01).胎児期および出生後の生命予後においては2群間に有意差はなかった.
結論:近年,胎児心エコー検査施行例中のCHD有病率が上昇していた.なかでも22週未満の早期CHD診断例が増加しており,関連各科の連携やカウンセリングを含めた家族へのサポートが必要となっていた.軽症CHD症例の増加に対しては,分娩施設の選定を含めて施設間の連携が今後必要であると考えられた.

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