日本小児循環器学会雑誌
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32 巻 , 1 号
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巻頭言
Reviews
  • 南沢 享
    2016 年 32 巻 1 号 p. 2-8
    発行日: 2016/01/01
    公開日: 2016/03/03
    ジャーナル オープンアクセス
    動脈管は胎児循環に必須のバイパス血管として機能し,出生後に閉塞する必要がある.動脈管が閉塞するには二つの機序が働く.すなわち,主に血中酸素の増加とプロスタグランジンE2(PGE2)の低下による血管の収縮と,血管構造自体が閉塞しやすく変化することが挙げられる.私達は一連の研究で,PGE2には動脈管拡張作用に加えて,PGE2とその受容体EP4を介した刺激が,内膜肥厚や内弾性板断裂,中膜での弾性線維の低形成など動脈管構造の主要な構築において,極めて重要な役割を果たしていることを明らかにした.さらに詳細にその情報伝達経路を調べたところ,PGE2-EP4刺激はアデニル酸シクラーゼ6型の活性化を介してcAMPを増加させ,PKA及びEpacの活性化を促して動脈管内膜肥厚を生じさせることを見いだした.さらにPGE2-EP4刺激はc-Src-PLCγ経路の活性化によってリシルオキシダーゼの分解亢進が起こり,弾性線維の低形成を生じることが判明した.内膜肥厚や弾性線維の形成機序を含め,動脈管の血管構造を構築する分子機序を明らかにすることによって,動脈管開存症や動脈管依存性先天性心疾患患者への新たな薬物療法の開発へとつながることが期待される.
  • 中川 直美
    2016 年 32 巻 1 号 p. 9-18
    発行日: 2016/01/01
    公開日: 2016/03/03
    ジャーナル オープンアクセス
    Warfarinによる経口抗凝固薬療法には,効果不足に起因する血栓性合併症と,効果過剰に起因する出血性合併症という双方のリスクが伴う.後者の中で特に重大な合併症である頭蓋内出血の死亡率は50%を超える.予後改善には早急かつ完全なWarfarin拮抗が必須である.新鮮凍結血漿が第一選択だが,Vitamin K依存性凝固因子の含有量が製剤間で異なり必要量が一概に予測できない,拮抗に時間を要する,容量負荷が大きいという側面を有する.緊急時には血液凝固第IX因子複合体が有用だが,適応外使用である.Warfarin拮抗の際には同時に血栓塞栓症の予防も念頭に置かなければならず,特に機械弁挿入患者では完全な止血を確認後,早期からヘパリンを併用し,発症1~2週間でWarfarin再開を考慮する.また機械弁不全をみた場合,血栓溶解療法を行うか否かには血栓弁とパンヌスの鑑別が重要である.さらに頭蓋内出血既往例が血栓弁を生じた場合,血栓溶解療法は禁忌に準じると考えるべきである.
原著
  • 鈴木 孝典, 林 泰佑, 小野 博, 前野 泰樹, 堀米 仁志, 村島 温子
    2016 年 32 巻 1 号 p. 19-25
    発行日: 2016/01/01
    公開日: 2016/03/03
    ジャーナル オープンアクセス
    背景:抗SS-A抗体陽性妊娠に限定した胎児先天性完全房室ブロック(CCAVB)の予後規定因子についての報告はほとんどなく,母体の膠原病症状や母体抗SS-A抗体価とCCAVBの胎児の予後の関連についても報告は少ない.本研究の目的は,母体抗SS-A抗体陽性のCCAVBの胎児における子宮内胎児死亡(IUFD)の危険因子を明らかにすることである.
    方法:全国66施設で1996~2010年に娩出された母体抗SS-A抗体陽性のCCAVB胎児47例を,IUFD群(7例)とlive-birth群(40例)に分け,臨床データや各種検査値を後方視的に比較した.
    結果:IUFD群では,live-birth群に比べ,診断時の胎児心拍数が55回/分未満であった症例が多く(57% vs 17%, p<0.05),経過中に胎児水腫を認める頻度が高く(71% vs 20%, p<0.05),さらに母体年齢が高かった.多変量解析では,胎児水腫と母体高年齢がIUFDの独立した危険因子であった.両群で母体膠原病の有症状率,母体抗SS-A抗体価,およびステロイドの経胎盤的投与率に有意差はなかった.
    結論:母体抗SS-A抗体陽性のCCAVBの胎児では,胎児水腫と母体高年齢がIUFDの危険因子であり,胎児水腫について注意深く経過観察し,適切な娩出時期を検討する必要がある.
  • 河津 由紀子, 稲村 昇, 田中 智彦, 浜道 裕二, 萱谷 太
    2016 年 32 巻 1 号 p. 31-37
    発行日: 2016/01/01
    公開日: 2016/03/03
    ジャーナル オープンアクセス
    背景:近年,本邦でも胎児心エコー検査が普及して先天性心疾患(CHD)の胎児診断例が増加している現状である.
    目的:当センターにおける最近の胎児心エコー検査の動向をまとめ,改善点を見出すことを目的とする.
    方法:2013年までの10年間に当科の胎児心エコー検査で診断したCHD687例を対象とし,前半5年間の241症例をA群,後半5年間の446症例をB群として後方視的に検討した.
    結果:胎児心エコー検査施行例中のCHD有病率は,A群241例(29.1%),B群446例(49.0%)とB群で有意に高かった(p<0.01).紹介理由は両群ともにCHD疑い,先天異常,胎児発育不全の順で多く,2群間での有意差はなかった.在胎22週未満のCHD症例数は,A群36例(14.9%),B群91例(20.4%)であり,B群において有意に多かった(p<0.05).軽症CHD症例数は,A群101例(41.9%),B群235例(52.7%)であり,B群において有意に多かった(p<0.01).胎児期および出生後の生命予後においては2群間に有意差はなかった.
    結論:近年,胎児心エコー検査施行例中のCHD有病率が上昇していた.なかでも22週未満の早期CHD診断例が増加しており,関連各科の連携やカウンセリングを含めた家族へのサポートが必要となっていた.軽症CHD症例の増加に対しては,分娩施設の選定を含めて施設間の連携が今後必要であると考えられた.
症例報告
  • 野村 耕司, 阿部 貴行, 成瀬 瞳, 河内 文江, 森 琢磨, 細谷 通靖, 菅本 健司, 菱谷 隆, 小川 潔, 星野 健司
    2016 年 32 巻 1 号 p. 38-42
    発行日: 2016/01/01
    公開日: 2016/03/03
    ジャーナル オープンアクセス
    胎児期,および出生直後の心エコーではともに構造異常を認めなかった左心室腔内に,生後1歳2ヶ月時に隔壁構造を指摘された.隔壁により二腔化された左室内心尖腔(副腔)に血栓を生じるとともに急速な副腔の収縮機能低下をきたした2歳男児に対して緊急手術にて血栓除去および隔壁部分切除術を行った.僧帽弁乳頭筋が付着している隔壁部分は温存した.術直後から副腔機能は改善し,血栓再発や僧帽弁逆流は見られていない.異常隔壁の発生・発達に極めて特異な経過をとった,左室二腔症の手術例を報告する.
  • 田代 克弥, 飯田 千晶, 牛ノ濱 大也
    2016 年 32 巻 1 号 p. 43-47
    発行日: 2016/01/01
    公開日: 2016/03/03
    ジャーナル オープンアクセス
    Fontan手術後に発症した低蛋白血症にspironolactoneの追加投与が奏功した症例を経験したので報告する.症例は3歳男児.大動脈縮窄を合併した左室型単心室に対してFontan手術(total cavo-pulmonary connection, TCPC)を施行された.術後6カ月後に,明らかな誘因なく血清総蛋白4.3 g/dL,アルブミン2.5 g/dL,IgG 182 mg/dLと低下を認めた.尿蛋白陰性であり,患者の既往歴からPLEよる低蛋白血症を疑った.患者は既にtorasemide,tadaraphilを内服していたところでの発症であったため,免疫グロブリン製剤の補充を行うと共にtolvaptanの投与を開始したが,3カ月の観察中に十分な効果は得られなかった.発症3カ月後にspironolactone 20 mg(1.5 mg/kg/day)を追加したところ,翌日より眼瞼浮腫は消失し,2週間後には血液検査値も正常化し現在に至っている.本例では,これまでに有効性が示されている薬剤(利尿剤・phosphodiesterase type 5阻害剤・抗利尿ホルモン受容体拮抗薬)が既に導入されている状況での発症であったが,spironolactone追加投与が極めて有効であった.Fontan術後の低蛋白血症の治療においてspironolactoneが有用な選択肢の一つである.
  • 原田 雄章, 深江 宏治, 安東 勇介, 小江 雅弘, 松永 章吾, 八浪 浩一, 松尾 倫, 西原 卓宏
    2016 年 32 巻 1 号 p. 50-53
    発行日: 2016/01/01
    公開日: 2016/03/03
    ジャーナル オープンアクセス
    胸部鈍的外傷後の心室中隔穿孔に対し受傷後3か月で手術を行い良好な結果を得たので報告する.症例は7歳,男児.学校で遊んでいる際に前胸部を突かれるようにアルミ製のブラインド下端の棒に衝突し鈍的外傷を負った.受傷直後はなかった心雑音を1か月後に聴取し心エコーで心尖部に左右短絡を認めた.その後,易疲労感と左室の拡大傾向を認めたため受傷後3か月で手術を施行した.左室切開アプローチを選択し穿孔部の同定は容易で心尖部中隔に10 mmの亀裂を認めパッチで閉鎖した.術後の経過は良好であった.
  • 森 琢磨, 河内 文江, 細谷 通靖, 菅本 健司, 菱谷 隆, 星野 健司, 小川 潔, 井田 博幸
    2016 年 32 巻 1 号 p. 56-61
    発行日: 2016/01/01
    公開日: 2016/03/03
    ジャーナル オープンアクセス
    Uhl病は右室心筋の部分的あるいは完全な欠如によって,羊皮紙様の菲薄化を伴う著明に拡張した右室を特徴とする原因不明の疾患である.Uhl病の多くは乳幼児期に発症し,そのほとんどは成人期に達することはないとされている.今回,乳児期にUhl病と診断し,無症状で18年間長期経過観察している一例を報告する.2ヶ月時の心臓超音波検査でUhl病と診断し,6歳時に施行した心血管造影検査にて著明に拡大した右室を認めた.12歳時に施行したMRIでは右室自由壁は菲薄化し,右室拡大は増悪していた.15歳時のMRIでは右室拡大はさらに増悪し,経時的に右室は拡大傾向を示していたが,右心不全症状を呈することなく(NYHA I),良好な経過を示している.Uhl病の自然歴を把握するうえで重要な一例と思われる.
Images in Pediatric and Congenital Heart Disease
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