抄録
背景:抗SS-A抗体陽性妊娠に限定した胎児先天性完全房室ブロック(CCAVB)の予後規定因子についての報告はほとんどなく,母体の膠原病症状や母体抗SS-A抗体価とCCAVBの胎児の予後の関連についても報告は少ない.本研究の目的は,母体抗SS-A抗体陽性のCCAVBの胎児における子宮内胎児死亡(IUFD)の危険因子を明らかにすることである.
方法:全国66施設で1996~2010年に娩出された母体抗SS-A抗体陽性のCCAVB胎児47例を,IUFD群(7例)とlive-birth群(40例)に分け,臨床データや各種検査値を後方視的に比較した.
結果:IUFD群では,live-birth群に比べ,診断時の胎児心拍数が55回/分未満であった症例が多く(57% vs 17%, p<0.05),経過中に胎児水腫を認める頻度が高く(71% vs 20%, p<0.05),さらに母体年齢が高かった.多変量解析では,胎児水腫と母体高年齢がIUFDの独立した危険因子であった.両群で母体膠原病の有症状率,母体抗SS-A抗体価,およびステロイドの経胎盤的投与率に有意差はなかった.
結論:母体抗SS-A抗体陽性のCCAVBの胎児では,胎児水腫と母体高年齢がIUFDの危険因子であり,胎児水腫について注意深く経過観察し,適切な娩出時期を検討する必要がある.