日本小児循環器学会雑誌
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ISSN-L : 0911-1794
症例報告
β遮断薬およびrenin–angiotensin–aldosterone系拮抗薬によってsteroid療法から離脱し得たFontan手術後タンパク漏出性腸症の2自験例
小林 智恵朴 仁三嘉川 忠博上田 知実中本 祐樹稲毛 章郎吉敷 香菜子佐藤 正規高橋 幸宏安藤 誠和田 直樹
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2016 年 32 巻 4 号 p. 344-349

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抄録

Fontan循環における肺循環へ血液を拍出する心室を欠く特殊性による中心静脈圧(CVP)の上昇,心拍出量低下はタンパク漏出性腸症(PLE)の発症要因と考えられている.我々は開窓部閉塞を契機にPLEを発症し,prednisolone(PSL)による寛解後,直ちに血行動態を評価し血管拡張療法を強化したところ,寛解を維持したままPSLを中止し得た2症例を経験したので報告する.2症例ともPLE寛解直後のカテーテル検査で心係数(CI)と右室駆出率(RVEF)の低下,体血管抵抗(SVR)と右室の拡張能を表すと考えられる右室拡張末期圧(RVEDP)/CIの上昇が認められた.右室拡張障害の改善を主目的としてβ遮断薬(BB),アンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACEi),アンギオテンシンII受容体拮抗薬(ARB),spironolactone(SPL)の併用療法を強化したところ,PSL中止時にはSVR, RVEDP/CIは低下しCI, RVEFは改善していた.PLE発症には心拍出量低下への反応であるSVR上昇と,それによる体循環心室機能低下が関与するものと推測された.また,交感神経系抑制薬とrenin–angiotensin–aldosterone(RAA)系抑制薬の併用療法は,Fontan手術後に発症するPLE治療の一選択肢と考えられた.

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© 2016 特定非営利活動法人日本小児循環器学会
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