2016 年 32 巻 6 号 p. 534-539
何らかの要因で小児期にFontan手術に到達せず,成人期に至った症例が存在する.一方,成人期におけるFontan手術の適応と治療戦略,その予後に関しては未だ明らかではない.症例は僧帽弁閉鎖,完全大血管転位,心室中隔欠損,肺動脈弁下部狭窄の女性.肺高血圧のため小児期からFontan手術非適応として経過観察されていた.40歳時に肺生検を含めた再評価を行い,段階的にFontan手術に到達することができた.また,Fontan手術後に出現した房室弁逆流の増悪と同期不全によるFontan循環不全に対して,房室弁置換と心臓再同期療法を行い,心不全が改善した.心臓再同期療法は機能的単心室でも有用な治療法となりうる可能性が示唆された.