日本小児循環器学会雑誌
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33 巻, 2 号
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巻頭言
Review
  • 坂口 平馬
    2017 年 33 巻 2 号 p. 85-90
    発行日: 2017/03/01
    公開日: 2017/05/13
    ジャーナル オープンアクセス

    小児領域における心臓再同期療法(CRT)では,心構築異常がある場合とない場合で心室再同期のアプローチの仕方が変わる.心構築異常がない場合は十分に成人領域で培われた経験をもとに応用することができる.しかし,ただ体格が小さいだけではない小児のCRT適応患者に対してどのようにアプローチしていくか具体的に自験例をもとに解説する.また心構築異常を伴い複雑な心室形態を有する症例に対するCRTは,個々の症例ごとにペーシング部位や,植え込み方法を選択していかなければならない.小児の重症心不全治療におけるCRTの適正な導入を行っていくために,今後この領域でのさらなる知見の集積が望まれる.

  • 種市 尋宙
    2017 年 33 巻 2 号 p. 91-99
    発行日: 2017/03/01
    公開日: 2017/05/13
    ジャーナル オープンアクセス

    2010年7月,わが国の臓器の移植に関する法律が改正された.それにより,本人の同意なしに家族からの同意が得られれば,15歳未満の小児からの脳死下臓器提供も可能となった.それから6年が経ったが,15歳未満の小児における脳死下臓器提供は,12例にとどまっている.6歳未満からの脳死下臓器提供はそのうち6例である.なぜ,わが国では子どもの脳死下臓器提供が増えないのであろうか.オプション提示,虐待評価,施設体制整備,終末期医療の未熟さ,主治医への極端な負担の多さなどが問題として挙げられる.そして,これらの問題を解決するためには,なによりも小児科医の変化が求められている.すべての小児科医が関心を持って,議論に参加しなくてはいけない.

  • 田村 まどか, 福嶌 教偉, 白石 公
    2017 年 33 巻 2 号 p. 100-109
    発行日: 2017/03/01
    公開日: 2017/05/13
    ジャーナル オープンアクセス

    補助人工心臓(VAD)の開発と承認などにより,移植待機中の患者の状態が多様化している今日の小児心臓移植医療の現場において,移植待機期間中,そして移植後も子どもとその家族への心理社会的支援の提供は重要である.医療環境下にある子どもや家族に,心理社会的支援を提供する専門職であるChild Life Specialist(CLS)は,小児心臓移植医療の現場において,①治癒的遊びと環境の提供,②医療体験への心の準備のサポート,③検査・処置中の心理的サポート,④退院・復学支援,⑤きょうだい・家族へのサポート,⑥グリーフ・サポートなどを通して,子どもたちが主体的に医療に臨めるように医療チームの一員として活動している.CLSを含む移植医療に関わる多職種が,チームで連携し協働することにより,子ども一人ひとりのニーズに合った支援の提供と,その家族全体の包括的な支援が心臓移植待機中,そして移植後も継続して可能になると考える.

  • 鎌田 政博
    2017 年 33 巻 2 号 p. 110
    発行日: 2017/03/01
    公開日: 2017/05/13
    ジャーナル オープンアクセス
  • 岩本 眞理
    2017 年 33 巻 2 号 p. 111-119
    発行日: 2017/03/01
    公開日: 2017/05/13
    ジャーナル オープンアクセス

    12誘導心電図で不整脈が記録されている場合には,まず不整脈の存在を確定する.2 : 1房室伝導が継続している心房粗動や心房頻拍では12誘導を細かく見ることでP波を見つけることが可能になる.またQRS幅の広い頻拍でもP波とQRSの関連をみることで心室内変行伝導なのか心室頻拍なのかを鑑別する.心室性不整脈であればQRS形態からその起源を推測しアブレーション治療の重要な情報となる.また心電図記録中に不整脈がなくても12誘導心電図から不整脈基質を知ることが可能である.不整脈基質に遺伝性不整脈があり,QT延長症候群・QT短縮症候群・Brugada症候群等は12誘導心電図から診断可能だが,カテコラミン誘発多型性心室頻拍の安静時心電図は正常であり病歴と運動負荷心電図が必須である.また器質的心疾患に伴った不整脈(心筋症他)では疾患に応じた心電図異常があり不整脈基質として重要である.

  • 豊原 啓子
    2017 年 33 巻 2 号 p. 120-124
    発行日: 2017/03/01
    公開日: 2017/05/13
    ジャーナル オープンアクセス

    不整脈診断のための負荷試験:1. 運動負荷試験,2. 薬物負荷試験,3. head up tilt試験,4. 顔面浸水試験について述べる.負荷試験の結果により生活,運動制限,投薬などの方針決定が目的となる.いずれも侵襲を伴うものであり,行うにあたっては適応を検討する必要がある.また誘発された不整脈が致死的になる場合もあり十分なインフォームドコンセントとリスク回避のための準備が必要である.

  • 鈴木 嗣敏
    2017 年 33 巻 2 号 p. 125-134
    発行日: 2017/03/01
    公開日: 2017/05/13
    ジャーナル オープンアクセス

    学校心臓検診で抽出される不整脈は無自覚・無症状の疾患がその大勢を占め,その管理に苦慮することは多い.本稿では学校心臓検診で抽出される,心室性期外収縮(PVC),QT延長症候群(LQT),WPW症候群について概説する.PVCは多くが治療介入の必要がない良性の不整脈である.カテコラミン誘発性多型心室頻拍(CPVT)の鑑別が問題となるが,CPVTは安静時PVCを認めないことが多く検診で抽出されるPVCにCPVTが含まれることは稀である.LQTはトレッドミル検査やホルター検査で精査を行う.補正式はFridericia補正が推奨されている.LQTが疑われる場合,運動制限,予防内服治療,遺伝子検査について検討が必要となる.WPWはΔ波で診断される心房と心室をつなぐ副伝導路による疾患だが,Δ波を有する早期興奮症候群の中で束枝と心室をつなぐ副伝導路(FVP)との鑑別が問題となる.FVPは頻拍発作や突然死のリスクのない疾患であり,疾患概念を理解しておくことは重要である.

  • 鈴木 章司
    2017 年 33 巻 2 号 p. 135-139
    発行日: 2017/03/01
    公開日: 2017/05/13
    ジャーナル オープンアクセス

    房室弁の解剖知識は,小児循環器疾患の診断や治療の質を高める上で不可欠である.僧帽弁では,弁尖,弁輪,支持組織の構造と機能,また腱索や乳頭筋の変異を理解する.先天性僧帽弁膜症では,弁尖の異型性だけでなく,弁下組織にも異常を伴うことが多い.僧帽弁周囲にある左冠動脈回旋枝,冠状静脈洞,中心線維体,大動脈弁などとの関係も重要である.三尖弁では,弁尖,腱索,乳頭筋の構造,また中隔尖から前尖に多くみられる変異を理解する.三尖弁周囲にある大動脈弁,刺激伝導系(Koch三角)や膜様部中隔との関係も重要である.代表的な房室弁異常を伴う疾患として,房室中隔欠損症とエプスタイン奇形がある.前者では共通房室弁の変異,正常とは異なる刺激伝導系など,後者では高度逆流をきたしうる中隔尖,後尖の変形や付着部の偏位,右室形態の多様性を理解する.単心室型疾患では,体循環を担う三尖弁の耐用性や共通房室弁の逆流が予後に影響する.

  • 新居 正基
    2017 年 33 巻 2 号 p. 140-156
    発行日: 2017/03/01
    公開日: 2017/05/13
    ジャーナル オープンアクセス

    房室弁機能は先天性心疾患,特に単心室循環においてその予後に大きな影響を与える.単心室循環において房室弁閉鎖不全による心房圧の上昇は体静脈圧と肺静脈圧両方の上昇につながり,体循環と肺循環両方の鬱血を引き起こす.房室弁には僧帽弁,三尖弁,そして共通房室弁が存在するが,それぞれの形態は大きく異なり,特にheterotaxy症候群における共通房室弁はまさに多様であり,患者ごとに異なった形態を有する.そして,その機能維持には弁組織だけでなく,弁下構造,心室機能そして心房機能が深く関与する.弁構造はその複雑さゆえに完全な術前評価が未だに困難であるが,術中の経食道心エコーや三次元エコーを含めて心エコーに勝る画像検査は未だ存在しない.また,単心室のなかでも左心低形成症候群における三尖弁やheterotaxy症候群における共通房室弁はその解剖学的複雑さのために特に形成の難易度が高い房室弁であり,これらの房室弁に対する形成の方法論を確立することができればその予後改善に大きな貢献となる.本総説では心エコー,三次元エコーや経食道心エコーを用いた房室弁の解剖学的評価方法について概説する.

  • 芳村 直樹, 池野 友基
    2017 年 33 巻 2 号 p. 156-162
    発行日: 2017/03/01
    公開日: 2017/05/13
    ジャーナル オープンアクセス

    先天性房室弁疾患の外科治療には未解決な問題が多く,challengingな領域である.

    【先天性僧帽弁膜症】形態異常が多岐にわたること,ほかの心疾患を合併する頻度が高いことから,治療に難渋する疾患群である.弁形成術が第一選択であるが,形成が不可能な高度の病変に対しては人工弁置換術が選択される.弁置換術後は,身体の発育に応じて人工弁のサイズアップが必要となる.

    【房室中隔欠損症】左側房室弁狭窄を招来することなくいかに逆流を防止するかが問題となる.房室中隔欠損の弁形成の成否は房室弁を左右に正しく分割できるか否かにかかっており,正しい分割が行われないと,弁形成は決して成功しない.

    【単心室症例に合併する房室弁疾患】房室弁逆流の存在は,Fontan型手術を目指す単心室症例の予後を著しく悪化させる.特に新生児や乳児早期から手術介入を要する高度の房室弁病変の治療は非常に困難である.弁形成術の成績は不良で,症例によっては人工弁置換を選択したほうが良好な結果が得られることもある.

    【Ebstein病】 2004年,da Silvaらにより報告されたCone reconstructionは術直後から遠隔期まで,三尖弁逆流が良好に制御され,今後,本疾患に対する標準術式となることが期待される.

原著
  • 真田 和哉, 田原 昌博, 新田 哲也, 下薗 彩子, 山田 和紀
    2017 年 33 巻 2 号 p. 163-168
    発行日: 2017/03/01
    公開日: 2017/05/13
    ジャーナル オープンアクセス

    背景:当院では乳幼児期に行う肺動脈閉鎖兼心室中隔欠損症(PA/VSD)の修復術において可能な限り後壁に自己組織を用いた右室流出路再建術(RVOTR)を施行している.

    方法:対象は1996~2015年に3歳未満で修復術を行ったPA/VSD 18例.RVOTRにおいて後壁に自己組織を用いた12例(A群)とexpanded polytetrafluoroethylene導管を用いた6例(C群)に分けて再手術と再介入の回避率とその期間,術後肺動脈狭窄へのバルーン拡張術の効果について検討した.

    結果:A群,C群の再手術回避率;5年72.7%,62.5%: 10年72.7%,0%,再介入回避率;1年63.6%,50.0%: 3年36.4%,16.7%であり,A群のほうが高い傾向を認めた[p=0.35, 0.16,ハザード比0.47, 0.47].バルーン拡張術はA群;10件12か所,C群;10件14か所で,右室圧/左室圧比の変化では有意差は認めなかったが,再手術のないA群の症例(6件8か所)では有意に低下していた[p=0.001].

    結論:後壁に自己組織を使用するRVOTRは再手術時期を遅らせる可能性がある.

  • 松扉 真祐子, 鎌田 政博, 中川 直美, 石口 由希子, 森藤 祐次, 松本 祥美
    2017 年 33 巻 2 号 p. 169-176
    発行日: 2017/03/01
    公開日: 2017/05/13
    ジャーナル オープンアクセス

    背景:気道圧排による呼吸障害を合併した先天性心疾患に対する治療は,現在,定まった指針がないため,適切な治療法,介入時期を明らかにするため検討を行った.

    方法:2005年から2015年に経験した気管気管支軟化症を合併した先天性心疾患15例について,I群:肺動脈弁欠損群,II群:左右シャント群,III群:血管輪群の3群に分類し,後方視的検討を行った.

    結果:心内修復術(ICR)または血管輪解除による気道圧迫解除を行った11例中9例(82%)は気道症状が改善し,ICR未施行4例は全例死亡した.手術月齢はI群2.8±3.0,II群6.0±3.4,III群7.8±3.9,術前待機月数はIII群4.0±1.6(平均±標準偏差)が最長であった.I群,II群では全例で術前呼吸管理が必要であった.染色体異常合併8例中4例(50%)は術後も気道症状が残存した.

    結論:ICRまたは血管輪解除による気道圧迫解除が気道病変の改善に必要である.血管輪以外の疾患群ではより早期に外科治療が必要になる可能性があり,早期にICRを計画することが患児の予後改善につながる.

症例報告
  • 田原 昌博, 真田 和哉, 新田 哲也, 下薗 彩子, 山田 和紀, 藤澤 知雄
    2017 年 33 巻 2 号 p. 180-186
    発行日: 2017/03/01
    公開日: 2017/05/13
    ジャーナル オープンアクセス

    Fontan関連肝疾患(FALD)の病態は不明な点が多く,高い中心静脈圧に起因するうっ血肝等により肝組織障害が発現すると考えられている.症例は13歳男児.Ebstein奇形,心室中隔欠損のため2歳時にFontan手術施行.4歳時蛋白漏出性胃腸症(PLE)発症.8歳時門脈体循環シャント(PSS)指摘.11歳時PLE再発.13歳8ヶ月時PLE再々発.経過中直接ビリルビン上昇が徐々に増悪し,13歳10ヶ月で永眠.肝組織で毛細胆管内の胆汁うっ滞,中心静脈・類洞拡大,肝細胞融解性壊死等を認め,循環不全に伴うショック肝と判断した.肝線維化は軽度であり類洞などへの血栓形成は認めなかった.PSSに伴う門脈血流減少に加え,心不全進行による中心静脈圧上昇があり,繰り返し肝細胞への虚血を生じた結果ショック肝に至ったと推察した.本症例もFALDの一病態と考えられる.今後の症例の積み重ねが大切である.

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