日本小児循環器学会雑誌
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症例報告
遺伝性出血性毛細血管拡張症1型に合併した肺動脈性肺高血圧症への初期併用療法の効果
原田 雅子近藤 恭平布井 博幸山田 修
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ジャーナル オープンアクセス

2017 年 33 巻 3 号 p. 221-227

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抄録

Endoglin (ENG)はACVRL1と共に遺伝性出血性毛細血管拡張症(hereditary hemorrhagic telangiectasia: HHT)の原因遺伝子であり,それぞれHHT 1型,2型に分類される.HHTでは,稀であるが肺動脈性肺高血圧症(PAH)を合併すると報告されている.多くはHHT 2型に合併し,HHT 1型に合併するものはほとんど報告されていない.今回,HHTの家族歴をもとに施行した遺伝子解析および積極的な画像診断によりENG遺伝子変異およびPAHの確定診断に至った7歳女児を経験した.初診時はWHO機能分類2度であったが,心臓カテーテル検査では平均肺動脈圧50 mmHg, 肺血管抵抗11.8 WU/m2,肺動脈楔入圧9 mmHgでありPAHの所見であった.一般に遺伝性PAHは予後不良とされ,ボセンタン,タダラフィル,ベラプロストによる初期併用療法を行ったところ,WHO機能分類は1度に改善し,平均肺動脈圧も35 mmHgと改善した.本症例では経口薬による初期併用療法が短期から中期的には有効であったが,今後も長期的な観察が必要と考えられる.

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© 2017 特定非営利活動法人日本小児循環器学会
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