日本小児循環器学会雑誌
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33 巻 , 3 号
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巻頭言
Review
  • 市川 肇
    2017 年 33 巻 3 号 p. 191-196
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/07/06
    ジャーナル オープンアクセス

    成人のLVAD(左室補助人工心臓)療法は心不全の非薬物療法,Bridge to transplantationとして確立した治療法となり,米国ではすでに一万例以上,本邦でも2010年9月のJMACS(Japanese registry for Mechanically Assisted Circulatory Support)設立以来その登録数は700例を超している.世界的にはBerlin Heart社製のEXCORが小児の重症心不全患者1,800例以上に対し使用されており,それまでの最終治療であったECMOに比し有意に良好な成績を上げている.本邦でも医師主導治験を経て2015年8月より本邦でも保険償還されたが,極端な小児心臓移植ドナー不足という背景から米国のように普及したとは言いがたい.このような現状から小児でも長期間の待機を安全に自宅で行える小児用埋め込み型が左室補助人工心臓の開発が待ち望まれている.

原著
  • 林 秀憲, 杉本 晃一, 𡈽田 勇太, 吉井 剛, 近藤 真, 木村 純人, 峰尾 恵梨, 北川 篤史, 安藤 寿, 石井 正浩, 宮地 ...
    2017 年 33 巻 3 号 p. 197-201
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/07/06
    ジャーナル オープンアクセス

    背景:左心低形成症候群(HLHS)では近年初回に両側肺動脈絞扼術が姑息術として行われるようになったが,遠隔期の問題が指摘されている.初回手術として積極的にNorwood手術を行い,Fontan手術に至る中期遠隔成績と危険因子を解析した.

    方法:2004年10月から2014年5月までにHLHS等の症例に対しNorwood手術を受けた連続する16名に対し後方視的解析を行った.

    結果:1例を除く15例に初回Norwood手術を行った.Norwood手術後1年生存率は69%,3年生存率は56%であり,遺伝子異常(p=0.037),Heterotaxy(p=0.026)が死亡の危険因子であった.BCPS後1.0±0.5年で,全例がFontan手術に到達した.

    結論:初回Norwood手術は遺伝子異常やHeterotaxyを除き有効な治療戦略であった.同病態への治療方針は再考の余地がある.

  • 栗田 佳彦, 馬場 健児, 近藤 麻衣子, 栄徳 隆裕, 塚原 宏一, 佐野 俊二, 笠原 真悟, 岩崎 達雄, 佐藤 修平, 大月 審一
    2017 年 33 巻 3 号 p. 202-210
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/07/06
    ジャーナル オープンアクセス

    背景:複雑先天性心疾患におけるFontan手術後に発症する蛋白漏出性胃腸症は発症すると難治・治療困難な病態であり生命予後を規定する.本研究の目的は当院でのPLE症例の予後と治療方針の検討である.

    方法:1991~2014年に岡山大学病院でFontan手術後PLEの診断・治療を行った23例を対象にし,転帰の調査と死亡症例の傾向について検討を行った.

    結果:Fontan手術施行401例中の23例(5.7%)に発症.フォローアップ期間は0.8~13年(中央値4.7年).生存率は5年68%,10年54%.死亡原因は敗血症(2例),PLE増悪による多臓器不全(2例),心不全(1例),頭蓋内出血(1例).死亡症例はPLE診断年齢が高くFontan手術から診断までの期間が長期であった.血行動態評価では治療前後の心係数(CI)と主心室駆出率(vEF),治療後の中心静脈圧(mCVP)に有意差を認めた.治療後CI<2.8 L/min/mm, vEF<50%,mCVP≧15 mmHgの症例は死亡率が高かった.

    結論:PLEに対する治療は一定の有用性を認めたが,予後は満足できるものではない.血行動態的な治療の目標はCI,vEFの改善とCVPを低下させることと思われる.

症例報告
  • 太田 宇哉, 倉石 建治, 野村 羊示, 郷 清貴, 田内 宣生, 西原 栄起
    2017 年 33 巻 3 号 p. 215-220
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/07/06
    ジャーナル オープンアクセス

    双胎間輸血症候群(twin-twin transfusion syndrome; TTTS)の受血児における僧帽弁閉鎖不全(mitral regurgitation; MR)の頻度は6~15%とされ,予後不良因子の1つである.我々は心拡大,胎児水腫を認めたTTTSに対し胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術(fetoscopic laser photocoagulation; FLP)を施行後も胎児期に重度の僧帽弁閉鎖不全は継続し,出生後に軽度へ改善した症例を経験したので報告する.症例はTTTSの受血児,在胎19週4日に胎児水腫のため転院し重度のMRを指摘された.在胎19週5日にFLPを施行し,徐々に羊水量の差と胎児水腫は改善した.在胎27週0日の胎児超音波検査では心胸郭断面積比47%,重度のMRを認めた.在胎32週4日に前期破水のため帝王切開で出生した.出生後の心臓超音波検査ではMRは重度で,僧帽弁に肥厚と前尖の軽度逸脱を認めた.日齢1に肺出血を生じたが,動脈管の閉鎖,呼吸状態や肺高血圧の改善に伴いMRは軽快した.僧帽弁は肥厚と前尖の逸脱を認め,容量負荷による機能性MRだけではないと考えられたが,1歳まで再増悪はなかった.

  • 原田 雅子, 近藤 恭平, 布井 博幸, 山田 修
    2017 年 33 巻 3 号 p. 221-227
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/07/06
    ジャーナル オープンアクセス

    Endoglin (ENG)はACVRL1と共に遺伝性出血性毛細血管拡張症(hereditary hemorrhagic telangiectasia: HHT)の原因遺伝子であり,それぞれHHT 1型,2型に分類される.HHTでは,稀であるが肺動脈性肺高血圧症(PAH)を合併すると報告されている.多くはHHT 2型に合併し,HHT 1型に合併するものはほとんど報告されていない.今回,HHTの家族歴をもとに施行した遺伝子解析および積極的な画像診断によりENG遺伝子変異およびPAHの確定診断に至った7歳女児を経験した.初診時はWHO機能分類2度であったが,心臓カテーテル検査では平均肺動脈圧50 mmHg, 肺血管抵抗11.8 WU/m2,肺動脈楔入圧9 mmHgでありPAHの所見であった.一般に遺伝性PAHは予後不良とされ,ボセンタン,タダラフィル,ベラプロストによる初期併用療法を行ったところ,WHO機能分類は1度に改善し,平均肺動脈圧も35 mmHgと改善した.本症例では経口薬による初期併用療法が短期から中期的には有効であったが,今後も長期的な観察が必要と考えられる.

  • 西村 智美, 豊原 啓子, 稲井 慶, 篠原 徳子, 朴 仁三, 庄田 守男
    2017 年 33 巻 3 号 p. 228-233
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/07/06
    ジャーナル オープンアクセス

    着用型自動除細動器 WCD(旭化成ZOLL Medical社製:LifeVest®)は,2014年に保険償還され,国内での使用が開始された.当科で成人先天性心疾患(CHD)2症例に対しWCD導入を経験したので報告する.

    症例1は,Fallot四徴症(TOF),Rastelli手術後の35歳女性.第一子分娩後に血圧低下,前失神発作を伴う非持続性心室頻拍(VT)を認めたが,VTに対する治療を拒否された.今回,第二子妊娠を契機に突然死予防目的でWCDを使用した.症例2は,TOF, Rastelli手術後の37歳女性.通勤中に心肺停止となり心肺蘇生が開始され,心室細動(VF)に対しAEDが作動し心拍は再開した.致死性不整脈が原因と考えられたが,直ちに植込み型除細動器(ICD)を植込むことを拒否したため,待機期間中にWCDを使用した.2症例の1日平均着用時間はそれぞれ8時間と18時間で,使用期間中にVT/VFは出現することなく経過しショックによる作動も認めなかった.

    着用のみで非侵襲的に使用可能なWCDは,今後CHD症例においても突然死を予防するために需要が高まると思われる.

  • 山口 洋平, 小宮 枝里子, 武井 陽, 笠木 実央子, 前田 佳真, 渡邉 友博, 梶川 優介, 細川 奨, 渡部 誠一, 森尾 友宏, ...
    2017 年 33 巻 3 号 p. 234-238
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/07/06
    ジャーナル オープンアクセス

    Treprostinilは,肺動脈性肺高血圧症に対して持続静脈内投与に加えて持続皮下投与で投与が可能なプロスタグランジンI2誘導体製剤で,日本国内でも成人症例の集積がある.今回,Treprostinil持続皮下投与を国内で初めて小児に導入し成功した.患児は7歳時に特発性肺動脈性肺高血圧症(IPAH)と診断され,内服3剤の併用と在宅酸素療法が行われたが改善が不十分であった.精神発達遅滞のため中心静脈カテーテル管理が困難と判断され,Treprostinil持続皮下投与を導入し,半年の経過観察中にWHO機能分類および心臓超音波検査所見が改善した.Treprostinil持続皮下投与は小児IPAHにも有効性が示唆され,Epoprostenol持続静脈内投与の導入・継続が難しい患児やEpoprostenol持続静脈内投与からの離脱を考えている患児に良い適応があると思われる.

  • 松尾 倫, 本田 啓, 八浪 浩一, 深江 宏治
    2017 年 33 巻 3 号 p. 241-246
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/07/06
    ジャーナル オープンアクセス

    低酸素血症と家族歴より遺伝性出血性毛細血管拡張症(HHT)に合併した多発性の肺動静脈瘻(PAVM)と診断された.流入動脈径3 mm未満であったが,低酸素血症を認める多発性病変のため症状改善を目的とし右左短絡量の多い順にコイル塞栓術を施行した症例を経験した.通常流入動脈径3 mm以上の場合は重篤な中枢神経合併症のリスクが高いことから,積極的治療介入を要す.最近ではデバイスの進歩もあり,3 mm未満の病変に対する治療適応の幅も広がってきていることから症例毎の検討を要す.HHTは常優染色体遺伝する疾患であり,家族歴を有する症例においてはスクリーニング検査を施行することでPAVMの早期診断に至りうる可能性がある.特にHHT type 1は多発性PAVMの合併率が高く,慎重なフォロー,適切な治療介入による症状改善,合併症予防が大切である.

  • 若松 大樹, 佐戸川 弘之, 黒澤 博之, 横山 斉, 桃井 伸緒, 青柳 良倫, 遠藤 起生, 林 真理子
    2017 年 33 巻 3 号 p. 249-255
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/07/06
    ジャーナル オープンアクセス

    Fontan型手術の適応は拡大し,条件も低年齢化したが,成人期に拡大可能か不明である.手術未施行の成人例は長期低酸素と容量負荷から低心機能と心拡大を伴うため,心尖下大静脈同側例へのTotal cavo-pulmonary connection(TCPC)手術では,導管ルートに配慮が必要となる.心尖下大静脈同側の成人例に一期的Fontan型手術を施行した.症例は,48歳男性で,小児期に右室性単心室と診断されたがFontan型手術に至らなかった.息切れと動悸から就労困難となった.診断は両大血管右室起始,右室性単心室,肺動脈弁と弁上部狭窄を認めた.精査し手術適応と判断した.手術は,肺動脈形成およびTCPC手術を行った.圧迫回避目的に導管は心尖同側心房内を通した.術後経過は良好で,術後32日目に退院し,退院後3ヶ月で職場に復帰した.成人期単心室症例に再評価を行い,一期的TCPCを施行した.成人期TCPCは有用な術式であるが,適応には慎重な判断を要する.心尖下大静脈同側で心拡大を伴う成人例に心房内ルートは有用であった.

  • 宮本 尚幸, 渡辺 健, 伊藤 由依, 佐々木 宏太, 佐々木 健一, 秦 大資
    2017 年 33 巻 3 号 p. 259-264
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/07/06
    ジャーナル オープンアクセス

    微小血管狭心症は,表在冠動脈に器質的狭窄や攣縮を伴うことなく,微小冠動脈の循環障害に起因する狭心症と定義される.中高年,とくに閉経後の女性に好発する疾患であるが,今回16歳という若年で本疾患を発症したと考えられる一例を経験したので報告する.症例は,16歳女児で,労作時の胸痛と心電図で軽度のST低下を指摘されて当院に紹介となった.身体所見,血液検査では特記すべき異常は認めなかった.運動負荷により硝酸薬抵抗性の狭心痛が出現し,201TI心筋シンチグラフィで心室前中隔の虚血を認めた.冠動脈造影では狭窄および攣縮は認めなかったが,エルゴノビン負荷で前下行枝(LAD)に血流速度の低下を認めた.上記結果から微小血管狭心症と判断した.β遮断薬とCa拮抗薬の併用で治療を開始し,胸痛頻度の低下と心筋シンチグラフィで虚血所見の改善傾向を認めている.近年,本疾患の予後は必ずしも良好でない可能性が示唆されている.非常に稀ではあるが胸痛を訴える若年者の中に本例のような病態の可能性があることを念頭におき,適切に治療することは重要であると考える.

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