日本小児循環器学会雑誌
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原著
先天性心疾患の手術非介入で経過している18トリソミーの検討
今井 祐喜加藤 太一加藤 有一久保田 哲夫服部 哲夫
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2017 年 33 巻 4 号 p. 312-317

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抄録

背景:近年18トリソミーの先天性心疾患(CHD)に対する手術の報告が増加している.当院は在宅移行を目標として治療を行っているがCHD手術の経験はない.積極的な新生児治療下でのCHD手術非介入例の経過を検討する.

方法:2005年4月から2015年12月に出生した18トリソミー計17例を対象とし,出生状況,生存率,在宅移行率,死亡原因などについて診療録に基づき後方視的に検討した.さらに心不全が症候化しうると考えられた肺血流増加型疾患のCHD例をLarge Shunt(LS)群として症状の有無を追加検討した.

結果:全例にCHDを認めた.1年生存率64.7%,在宅移行率70.6%,退院日齢は16~285日(中央値129日)であった.死亡例の生存期間は0~1,054日(中央値104.5日)であった.LS群8例のうち5例(62.5%)が1年以上生存し,いずれも心不全は症候化しなかった.死亡3例のうち2例は心不全が原因と考えられた.

結論:本検討ではCHD手術以外の標準的な新生児治療により,高い生存率・生存退院率が得られた.肺血流増加型のCHDを合併した18トリソミーは手術介入なく安定して経過する場合がある.肺血管閉塞性病変により生後の肺高血圧が持続することで,心不全が進行しなかったことが原因と考えられた.遠隔期の予後改善を目的としたCHD手術が有効であるかは明らかではなく,治療の選択肢として提案するにあたり,情報の蓄積が望まれる.

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© 2017 特定非営利活動法人日本小児循環器学会
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