2017 年 33 巻 4 号 p. 297-311
小児期発症の肺動脈性肺高血圧症は,特発性および遺伝性肺動脈性肺高血圧症や先天性心疾患による肺高血圧が多く,成人期発症の肺高血圧症とは異なる.また,小児の肺高血圧症では,臨床症状,治療反応性,予後因子などにおいて,成人といくつかの相違点や類似点が存在することがわかってきている.しかし,治療に関しては,前向き研究やランダム化比較試験が少ないため,未だ承認されている薬剤が少なく,成人の肺高血圧治療戦略を参考に,現在も模索されている状況である.その使用経験の報告からは小児患者においても成人と同等の効果が得られることがわかってきたが,小児への治療戦略は未だ確立されていない.成人における治療をそのまま小児患者に置き換えることは難しいため,近年小児の治療戦略に関して新しい提言が報告されはじめてきた.本稿では,小児期発症の特発性,遺伝性肺動脈性肺高血圧症および先天性心疾患に伴う肺高血圧症における未承認薬を含む薬物治療の有効性や安全性,治療戦略に関する新たな知見をまとめて紹介する.