2017 年 33 巻 4 号 p. 287-296
ミトコンドリア心筋症は,ミトコンドリアの構造,機能に関わる遺伝子の異常によって生じる酸化的リン酸化障害を特徴とする心筋症である.通常は全身のミトコンドリア病の心合併症として認識されることが多いが,心筋症が唯一の症状である場合には見逃されることが多い.原因遺伝子はミトコンドリアDNAと核遺伝子に存在し,症状は無症状のものから重症心不全,突然死まで様々である.近年,網羅的遺伝子検査の発達によりミトコンドリア病の原因遺伝子が次々と同定され始めてきているが,ミトコンドリア病は本来罹患組織の酸化的リン酸化障害を証明することで確定診断されてきた経緯があり,組織の生化学的検査は今なお避けては通れない検査として位置づけられている.