2017 年 33 巻 6 号 p. 423-430
背景:左心低形成症候群(HLHS)では左房容積が小さく,心房中隔の形態や心房中隔欠損(ASD)の大きさによってRashkind Balloon Atrial Septostomy(BAS)を行うことが困難な場合もある.
目的:当院におけるHLHSに対するBASの有効性について検討した.
対象と方法:2006年1月から2015年12月までの10年間にHLHSに対してカテーテル治療・手術を施行した患者におけるBASの有効性について検討した.またcatheter BASを施行した群についてASDの形態別に分けて有効性について両群比較検討した.
結果:全HLHS70例中のGlenn手術到達は57例(81%)であり,BAS未施行群では86%(44/51),catheter BAS群では91%(10/11),open BAS群では25%(2/8)と統計学的有意差を認めたが(p=0.0002),BAS未施行群とcatheter BAS群では同等の結果であった.(p=1.0)Glenn手術後にカテーテル検査を施行した56例について検討すると,BAS未施行群,catheter BAS施行群,open BAS施行群の平均肺動脈圧,肺血管抵抗,PAIいずれも3群間に差は認めなかった.次にCatheter BAS施行群をASDの位置・大きさ・atrial septumの厚さからstandard ASD (n=5), complex ASD(n=5)に分類し,ASDの形態別にBAS施行方法を検討すると,standard ASD群では全例Rashkind BAS単独施行で効果を得たが,complex ASD群ではRashkind BAS単独施行症例は1例のみで,Static BASを先行させRashkind BASに到達した症例が4例であった(p=0.048).BAS後のASD size, ASD flow, SpO2は2群間で統計学的有意差を認めなかった.
結論:catheter BASは有効で,Glenn後のカテーテルデータではBAS未施行群と有意差は認めなかった.またcomplex ASD群の場合には,Static BASを先行し,Rashkind BASを追加することで,standard ASD群と同等の効果を得ることができた.