2018 年 34 巻 2 号 p. 77-83
FBN1遺伝子の第24–32番エクソンの変異は重症かつ早期発症型のMarfan症候群を呈することが多いことが知られている.症例は4歳男児.新生児期より蜘蛛状指,大動脈弁輪拡張症(AAE),大動脈弁逆流症(AR)を呈し,4歳時にAAEの著明な進行とARに伴う心不全を認めたため当院Marfan外来に紹介され,4歳7か月時にDavid手術を施行された.遺伝学的検査でFBN1遺伝子にde novoの既報変異[IVS29+1G>A]を認め,転写産物の解析により本変異がスプライシングの異常によるin-flameの第29番エクソンの欠失を来すことを同定した.近年,Marfan症候群の発症メカニズムはdominant negative effectとhaploinsuffciencyの二つに大別して論ぜられているが,スプライシング異常に伴う変異の場合はそのどちらの形式もとりうるため,遺伝子産物の質的・量的な評価が必要となる.本症例では,FBN1遺伝子の第29番エクソンという変異の「位置」のみならず,スプライシング異常という変異の「形式」もまた,その大動脈病変の重症度に大きく寄与したと考えられた.