日本小児循環器学会雑誌
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34 巻, 2 号
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巻頭言
Review
  • 門間 和夫
    2018 年 34 巻 2 号 p. 55-62
    発行日: 2018/03/01
    公開日: 2018/06/06
    ジャーナル フリー

    Bis-diamineはラットに強力なteratogenで高率にヒト染色体22q11欠失症候群類似の先天性心疾患と胸腺低形成を生じさせるが,作用機序の詳細は不明である.Bis-diamine 200 mgを妊娠10日のラット40匹に胃内注入し,満期21日目に胎仔を全身急速凍結法,凍結ミクロトーム,実体顕微鏡(Wild M400)を用いて0.5 mm毎の胸部横断面を連続写眞で記録した.330胎仔に括弧内の率で次の先天性心疾患が生じた.各種のFallot四徴症(68%),総動脈幹残遺(18%),大動脈弓離断(2%),心室中隔欠損(3%),共通房室弁口(2%)である.Fallot四徴症では通常型(16%),肺動脈弁欠損型(14%),肺動脈弁閉鎖型(38%)があった.これらの心疾患には右側大動脈弓,鎖骨下動脈起始異常,血管輪などが合併した.肺動脈弁欠損のFallot四徴症では左右肺動脈の動脈瘤状の拡張があり,肺門部で気管支を圧迫して閉塞していた.同時に心房心室の拡大,心嚢液の貯留が生じた.共通房室弁口では両心房,両心室の拡大,房室弁の肥厚(異形成),心嚢液貯留があった.ヒトと異なり体肺側副血管はなかった.これらの胎生期先天性心疾患の生体内断面図を染色体22q11.2欠失症候群の胎児心エコーモデル図譜として提示する.

原著
  • 藤田 修平, 中川 亮, 西田 圭吾, 佐藤 啓, 臼田 和生, 廣野 恵一, 市田 蕗子, 二谷 武, 五十嵐 登, 畑崎 喜芳
    2018 年 34 巻 2 号 p. 63-71
    発行日: 2018/03/01
    公開日: 2018/06/06
    ジャーナル フリー

    背景:WPW症候群において頻回の頻拍発作がない症例で,副伝導路に起因すると思われる拡張型心筋症が報告されている.

    目的:顕性副伝導路による心室早期興奮の心機能に対する影響に関して検討する.

    対象と方法:対象は発作性上室性頻拍に対して心臓電気生理学的検査およびカテーテルアブレーション(RFA)を行った房室回帰性頻拍の20症例(男:女=8 : 12, 年齢12(0.8~16)歳).術前に副伝導路による心室早期興奮を認めた群(顕性群12例)と認めなかった群(潜在性群8例)で比較検討した.

    結果:RFA前の左室駆出率はいずれの群も正常範囲であったが顕性群で有意に低値であった(顕性群vs. 潜在性群66.0 (47.7~74.5) vs. 78.1 (70.1~83.0)%, p=0.001).左室駆出率は顕性群でRFA後に上昇した(前vs. 後66.0 (42.7~74.5) vs. 74.4 (52.7~80.7)%, p=0.003).潜在性群では左室駆出率の変化はなかった(前vs. 後78.1 (70.1~83.0) vs. 79.3 (72.1~85.2)%, p=0.58).心機能低下例を2例認め,左室駆出率はそれぞれ53.1, 42.7%であった.いずれも顕性群であり副伝導路は右後側壁および右前側壁副伝導路であった.RFA後に左室駆出率はそれぞれ75.7, 52.7%まで改善した.

    結論:顕性副伝導路症例では潜在性副伝導路症例に比べて左室駆出率が低値であり,顕性副伝導路の消失により左室駆出率は上昇することが示された.

Editorial Comment
症例報告
  • 小川 陽介, 中野 克俊, 進藤 考洋, 平田 陽一郎, 犬塚 亮, 藤田 大司, 武田 憲文, 谷口 優樹, 岡 明
    2018 年 34 巻 2 号 p. 77-83
    発行日: 2018/03/01
    公開日: 2018/06/06
    ジャーナル フリー

    FBN1遺伝子の第24–32番エクソンの変異は重症かつ早期発症型のMarfan症候群を呈することが多いことが知られている.症例は4歳男児.新生児期より蜘蛛状指,大動脈弁輪拡張症(AAE),大動脈弁逆流症(AR)を呈し,4歳時にAAEの著明な進行とARに伴う心不全を認めたため当院Marfan外来に紹介され,4歳7か月時にDavid手術を施行された.遺伝学的検査でFBN1遺伝子にde novoの既報変異[IVS29+1G>A]を認め,転写産物の解析により本変異がスプライシングの異常によるin-flameの第29番エクソンの欠失を来すことを同定した.近年,Marfan症候群の発症メカニズムはdominant negative effectとhaploinsuffciencyの二つに大別して論ぜられているが,スプライシング異常に伴う変異の場合はそのどちらの形式もとりうるため,遺伝子産物の質的・量的な評価が必要となる.本症例では,FBN1遺伝子の第29番エクソンという変異の「位置」のみならず,スプライシング異常という変異の「形式」もまた,その大動脈病変の重症度に大きく寄与したと考えられた.

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