日本小児循環器学会雑誌
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ここまで知っておきたい発生学:左右軸の決定と内臓錯位症候群
山岸 敬幸
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2018 年 34 巻 3 号 p. 99-104

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抄録

先天性心疾患は,心臓大血管の発生における特定の領域または段階の異常によって発症する.発生初期の胚は,心臓の原基を含めて左右対称の形態をしている.体の各臓器・組織が正常に左右非対称に形成されるためには,体の左右軸に関する情報が必要である.左右軸が決定される過程は,次のように説明される:Nodeのciliaが回転運動し,Nodal flowが生じることにより胚の右から左への分子の流れが発生する;その流れが胚の左側に左側形成機構を誘導し左側形成分子・遺伝子カスケード,すなわちTGF-βスーパーファミリーのNodal からLefty そして 転写因子Pitx2の発現に続く分子機構が活性化する.胚の左右軸の決定は正常な心臓形態形成にも必須であり,この分子機構が障害されると右側相同(無脾症候群),左側相同(多脾症候群)を含む内臓錯位症候群が発症し,単心室症,肺動脈閉鎖症などの重篤な先天性心疾患が合併する.左右軸決定の発生学のさらなる発展により,これら先天性心疾患の発症機構が解明されることが期待される.

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© 2018 特定非営利活動法人日本小児循環器学会
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