2018 年 34 巻 3 号 p. 88-98
先天性心疾患は,胎生期における心臓形態形成の過程が,胎児の遺伝子異常もしくは母体の環境要因により発症する多因子遺伝疾患と考えられている.心臓発生学を理解することは,先天性心疾患の形態診断,心疾患の病態把握,合併病変の予測,内科的治療方針の決定,外科手術手技の決定,長期予後の予測において大変重要である.本稿では,先天性心疾患の発症のメカニズムを理解するための胎生期の心臓形態形成のアウトラインについて解説する.近年目覚ましく進歩した,分子細胞生物学的手法および遺伝子改変マウスを用いた発生工学による先天性心疾患の発症メカニズムの知見は成書に譲ることとし,臨床医にとって基礎となる古典的な心臓形態形成の流れを中心に,図示してわかりやすく示す.