日本小児循環器学会雑誌
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原著
成人期にtotal cavopulomonary connectionによるFontan手術を施行した症例の中期成績と効果の検討
石井 卓嘉川 忠博矢崎 諭小林 匠吉敷 香菜子稲毛 章郎浜道 裕二上田 知実和田 直樹安藤 誠高橋 幸宏
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2018 年 34 巻 3 号 p. 143-152

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抄録

背景:本研究の目的は,成人期TCPC(total cavopulmonary connection)の中期成績を小児期TCPCと比較することで明らかにするとともに,合併症のリスク因子および手術による血行動態への影響を検討することである.

方法:当院でTCPCを行った症例のうち,手術時18歳以上の25症例を対象とし,診療録を用いて後方視的に検討を行った.また,比較対象として,当院でTCPCを行った小児例(5歳未満,75例)を用いた.

結果:周術期合併症を13例に認めたが,周術期死亡は1例のみだった.術後の累積生存率は5年時96.0%で,小児期TCPCと有意差を認めなかった.一方,退院後の心血管イベントは小児期TCPCと比べて有意に高かった.観察期間内における手術後の総死亡は3例で,術前の心室拡張末期圧と平均肺動脈圧の上昇が共通していた.退院後の心血管イベントは心房内臓錯位症候群症例で頻度が高かった.また,周術期,退院後ともに成人期TCPC症例では上室頻拍の頻度が小児例に比べて高かった.手術前後では,酸素飽和度の有意な上昇と心胸郭比の有意な改善が見られた.一方,手術後の心係数は平均1.9 L/min/m2と低値であった.

結論:成人期TCPCの生存率は良好で,チアノーゼの改善と心拡大の改善が得られるため,成人期であってもTCPCによるFontan手術を行う意義はある.ただ,上室頻拍をはじめとした術後の合併症頻度が高いことや心拍出量低下などは念頭におく必要がある.

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© 2018 特定非営利活動法人日本小児循環器学会
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