2020 年 36 巻 2 号 p. 143-149
近年,単心室・総肺静脈還流異常症(TAPVR)の垂直静脈狭窄に対して,新生児早期の手術を回避すべく姑息的ステント留置が行われている.垂直静脈ステント留置に伴うバルーンエントラップメント2例を経験した.【症例1】在胎40週5日,出生体重3,552 g.単心室,肺動脈狭窄,上心臓型TAPVRの男児.左上大静脈へ還流する垂直静脈狭窄のため出生当日肺うっ血を認め,左内頚静脈よりステント(Express SD® 6 mm)を留置した.ステントにウエストが残存した状態でバルーン回収を試みたが抜去困難となった.【症例2】在胎39週4日,出生体重2,882 g.左心低形成症候群,上心臓型TAPVRの女児.生後1日目,右上大静脈へ還流する垂直静脈の狭窄に右内頚静脈よりステント(Express SD® 8 mm)を留置した.ステントのウエストが残存した状態でバルーン回収を試みたが難渋した.いずれの症例もシースやカテーテルの操作で抜去することができた.垂直静脈狭窄へのステント留置の際は,バルーンエントラップメントを憂慮すべき合併症として認識する必要がある.